2011 Fiscal Year Annual Research Report
日独の法律学方法論の第二次大戦後における出発点の再検討
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23830117
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
服部 寛 松山大学, 法学部, 講師 (30610175)
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Keywords | 法律学方法論 / 評価法学 / 法解釈論争 / ヴェスターマン / 来栖三郎 / 悪法 / 1953 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの私の研究で積み重ねてきた、日独の法律学方法論の史的展開に関する考察を総合して、戦後初期の史的展開を分析するための視座を提示することに努めた。即ち、私はこれまで、ドイツについては、評価法学の先駆とされるヴェスターマンについて、彼が方法論に関する私見をまとまった形で提示したミュンスター大学学長就任演説を中心に検討を行い、日本については、戦後初期の方法論史の起点とされる法解釈論争を惹起したと理解されているところの、来栖三郎の日本私法学会における講演について、その背景的な状況について注目してきた。これらの研究をそれぞれ深めていく中で、ヴェスターマンの演説と来栖の報告の双方が、奇しくも1953年11月に行われているということに気づいた。そこで、この偶然的な類似点に着眼し、これらの演説・講演に関する方法論上の一般的理解と、その理解においては十分に解明されていると言い難いところの、それぞれの演説・講演に関連する、方法論史のいわば隠れた陰の問題について炙り出すことを試み、戦前・戦時期から戦後への展開を動的に把握する必要性を説いた。この考察について、本研究が採択される前に行った、国際法哲学社会哲学連合(IVR)第25回世界大会(2011年8月)におけるワーキング・グループにおける報告を踏まえ、2011年10月22日に松山大学において開催された中・四国法政学会においても報告を行った。そして、これらの報告に基づいて、松山大学論集23巻6号(2012年2月)において、上記の研究の成果を公表した。その他、本研究に関連する文献の収集にも従事し、今後の研究の展望を明瞭にするための準備作業に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を発表する場に恵まれたこともあり、交付申請書に記載した本年度の研究計画に概ね沿った形で、研究に従事することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初の計画に基づきながら、本年度において提示した、戦後初期の方法論史の展開を見る視点から得られた諸問題の解明に取り組む。ドイツにおいては、ヴェスターマンやザウアーといった、本研究におけるキーパーソンとなる学者の、戦後および戦時期における方法論上の見解の分析に従事する。日本については、牧野英一や、戦時期・戦後の裁判官を初めとする実務家の方法論の実際について、実定法上の諸事例の分析などを通じて検討を行い、日本の戦時期における方法論的問題の本質を抉り出すことに努めることにしたい。
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Research Products
(2 results)