2011 Fiscal Year Annual Research Report
間メディア環境における災害情報~東日本大震災オーディエンスが伝えた連帯と恐怖
Project/Area Number |
23830118
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
森岡 千穂 松山大学, 人文学部, 講師 (70610179)
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Keywords | 原子力発電所事故 / 風評被害 / 問題焦点型対処方略 / 食品忌避行動 / 情報発信源への信頼度 / 原発報道 / Twitter |
Research Abstract |
本研究は、東日本大震災・福島第一原発事故情報を伝えるメディアへの接触が、オーディエンスに「善意・連帯」イメージと「食品汚染恐怖」を喚起し、寄付活動・節電運動といった正の効果と、福島周辺産農産物忌避行動・誤情報の流布等の負の効果をもたらした構造を明らかにしようとするものである。 本年度は、(1)0~2歳までの子育てをしている女性、(2)3~12歳までのお子様の子育てをしている女性、(3)震災時帰宅困難になった人、(4)震災時twitterを利用した人、(5)災害が起こったことを想定して、何かしら備えておくようになった人を対象にインターネット上で意識調査を行った。(1)・(2)は主に放射性物質に対する意識や生産地チェックによる食品忌避行動を調査するためのサンプルであり、農産物・水産物の産地によって買わない事があるか、北関東産や自分の住んでいる地域の農産物について忌避行動を取っているか、忌避行動を取らなくなったきっかけはなにか等を調査した。忌避行動が強い世帯は母親の問題焦点型対処方略として「具体的解決行動」を取ろうとする率が高いこと、Webでの関係情報収集率が高くマスメディアへの不信感が高いこと、子供のアトピー等の既往歴等があることが分かった。一方でメディアでの報道量が減ったことを根拠に忌避行動をやめたり、地場産の野菜や家庭菜園の野菜を摂取している層もあり、その心理を寄り深く分析するべく、現在調査中である。 携帯電話とTwitterでのコミュニケーションについては、前者は女性で活発であり、後者はやや男性が中心であった。チェーンメールを受け取った人の中には発信者が信頼の置ける人であったために心配になった等の回答がある一方で、デマであると文面から分かったとした比率が最も高かった。避難した方がよい、もしくは危険ではないかという内容の連絡は親密な人間関係で行われており、同居していない両親や兄弟から連絡を受けた例が最も多くみられた。一方、支援については会社の呼びかけや住民組織・PTAなど公的な組織が関与している例が多く、Twitter上での呼びかけを見た率は低かった※但しtwitter自体の利用率も低い。政府の公式発表についてはメディアを仲介して把握するだけで良いとしている層がいる一方で、SPEEDIや当時の風向き地図をインターネットで確認し情報を補充しようとしている層が見られた。 今後、調査で得られた傾向が実際にはどのような心理に裏打ちされているのか、具体事例をインタビュー調査することで明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定していた以上に原発および食品への放射性物質混入に対する意識および報道量の変化が早いと予想されたため、福島県在住者も含めた関東在住者の意識調査(ネット)を実施した。被災地食品忌避行動については乳幼児・小学生以下の子供を抱える世帯で顕著であり、家庭内の食事に対する母親の責任意識や、問題焦点型対処方略との関係性もみられた。 メディアや国の発表に対する不信感は根強いものの、一方で報道量が減ったことにより「問題は沈静化しつつある」、「以前ほどは気をつけなくなった」という意見も見られ、風評被害がどのように終息していくのかを見ることが出来る。 今後は、より具体的な意識変化をインタビュー調査形式で収集していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
テレビ放送のWEB開放およびワンセグ利用について、放送局および携帯各社ヒアリングを行い、開放に至った経緯や災害後の新サービスの内容を明らかにする。その結果から、災害時頑健性の高いメディア・通信方法を抽出し、最終成果として次世代型災害時通信のあり方を考察する。また、twitter利用者や被災地支援を実施団体にヒアリング調査を行い、より具体的な連帯情報の伝達経路を明らかにする。チェーンメール対策を実際に行っている携帯各社にヒアリング調査を行い、前年度ネット調査結果と総合して誤情報伝搬モデルおよび阻止方法を提案する。 原子力発電所の事故により食品安全性が問われる自体になった場合、どのような情報提供が各層に対し有効なのかを提案できるよう、より詳細なインタビュー調査等を行う予定である。また、被災地と地理的距離が離れている愛媛県において食品忌避行動について調査するとともに、伊方原発をもつ県の県民としての懸念などもネット調査する。
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