2012 Fiscal Year Annual Research Report
非西洋後発国の近代化と教育の関係性に関する比較社会史的研究
Project/Area Number |
23830124
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Research Institution | Niimi College |
Principal Investigator |
武石 典史 新見公立短期大学, 幼児教育学科, 講師 (00613655)
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Project Period (FY) |
2011-08-24 – 2013-03-31
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Keywords | 近代化 / 近代学知 / 後発国 / 高等教育の国産化 |
Research Abstract |
1.今年度の研究実施概況 (1)近代的高等教育の導入・定着過程の分析 「伝統学知」、「近代学知」という2つの概念を用いながら、教育の定着過程を確認した。日中両国は伝統主義者の反発・抵抗に直面したが、日本はスムーズに近代学知を高等教育の正統的知識として浸透させることができた。これに対し、中国は科挙体制から脱却が遅れた。この点が近代化の成否を分けたのではないか、との仮説を生成した。 (2)高等教育の「国産化」と教育機会をめぐる問題 高等教育を自国語で行うこと(=国産化)が、教育機会にどのような影響を与えるのかを分析した。国産化によって、大量促成および低コストの高等教育が可能になるので、量的な面では確実に教育機会が拡大するとともに、質的な面でも下方に広がるという可能性がある、との結論を導き出した。 なお、2012年9月にチェンマイ大学日本研究センターに客員研究員として在籍し、各国の研究者に向けてこの「国産化と教育機会」をテーマとする報告を行った(研究計画では中国の研究機関を訪問する予定であったが、中国における対日感情の悪化により、チェンマイ大学日本研究センターに変更した)。 (3)「異文明導入を手段とする近代化」の検討 上記の(1)、(2)およびこれまでの作業で得られた知見を、近代化の文脈で検討した。本研究は歴史分析でありながら、現代の途上国の発展可能性をも示唆しているところに意義がある。今後は、本研究が示した鳥瞰図に、官僚制を切り口とする「教育と社会システム」との関係性についての分析を進めていく.
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