2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23840006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 知行 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (70609289)
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Keywords | p進コホモロジー / D加群 / ラングランズ対応 |
Research Abstract |
本年度の目標はp進係数のラングランズ対応を定式化することにあった.まず,p進係数のラングランズ対応が存在しているためにはp進係数理論においても重さの理論があることを示さなくてはならない.さらに6つの関手に対しても重さの理論が予想されうる動きをすることをいうことも後々に必要になってくるであろうことが分かる.これはにWeil IIのp進類似の構築,さらにはBeilinson-Bernstein-Deligne(BBD)による偏屈層に対する重さの理論を構成することが求められる.本年はD. Caro氏と共同でWeil IIのp進類似を示すことに成功した.証明ではケドラヤによる準安定還元定理を用いることなる.一方でBBD型の定理,つまり交叉コホモロジーの純性定理は次年度の課題として残った.また,論文の執筆は次年度に行う予定である. ラングランズ対応が一対一であるためにはチェボタレフ稠密定理のp進類似を示す必要がある.l進層は関数体のガロワ群の表現で書けるため純粋にガロワ群の性質を用いて示すことが出来た.一方でp進係数はガロワ群の表現では書けず,一般にはp進微分方程式となっているため,チェボタレフ稠密定理には問題があった.しかしクルーによる過収束Fアイソクリスタルの基本群を用いることにより今年度にチェボタレフ稠密定理のp進類似は示すことができた. これらの結果によりp進係数のラングランズ対応を期待通りの形で定式化することに成功した.さらに,イプシロン因子の積公式を用いることによりWeil IIの“小同志予想”からp進ラングランズ・プログラムが導かれることが示せる.系として,階数2以下の過収束Fアイソクリスタルは混であるという強い結果を得ることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p進係数のラングランズ対応に挑戦するにはいくつかのステップがあるが,本年度の目標はラングランズ対応を確かな形で公式化することであった.ラングランズ対応はコホモロジー的なもの(今回の場合は過収束アイソクリスタル)と数論的なもの(尖点的保型表現)の一対一対応である.p進係数の場合,係数が幾何学的に構成されているわけではないので,l進係数の場合とは違い,基本群の表現という形で表すことができない.l進係数に対して対応するp進係数が存在することは予想されていても(いわゆるドリーニュによるオリジナルの小同志予想)反対の対応があるか,あるとしてその対応は一対一になるのか,は定かではなかった.本年度に積公式を用い,さらにチェボタレフ稠密定理を示すことによってラングランズ・プログラムがほぼ確かにp進係数でも存在するであろう事が分かった.これにより,来年度以降ドリンフェルド・ラフォルグのアイディアで小同志予想を考えることができるようになる. また今年度はWeil IIのp進類似を示すことができた.重さの理論はラフォルグのl進係数の証明においても重要な役割を果たす物であり,当然期待すべき物である.一方で,重さの理論をp進係数で構築することはこれまで技術的に困難とされてきた.これは良い係数理論がp進コホモロジーにはなかったためである.この部分は当初の予定通り数論的D加群を用いることで解決できた.一方で残念ながら交叉コホモロジーの理論を完成させるには至らなかった. これらのことから,当初の目的以上とは言えないものの,順調に進展していると判断したものである.
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Strategy for Future Research Activity |
今年の目標は任意の多様体,願わくばアルティン・スタック,に対して数論的D加群の理論を構築することである.小同志予想を解決するためには6つの関手とそれらの基本性質を示す必要がある.現在の所,多様体が滑らかに持ち上がる場合か,その様な多様体に埋め込める場合しか数論的D加群の理論は構築されていない. 今年度は!クリスタルを用いてこれらの操作の構築に挑むつもりである.問題はこの!クリスタルがトポスから定義されるものでない点にある.そのため理論が煩雑になる可能性がある.しかし古典的なD加群の理論の6つの関手の構成過程を見る限りこれらの操作がトポスから自然に定義されているとは思えず,!クリスタルの構成の方が自然と思えるものである.一方で!クリスタルは技術的に様々な困難を含んでいる.問題になってくるものの一つとして,局所コホモロジー関手の構築がある.現在構成されている局所コホモロジー関手は,何かの関手の導来関手として定義されている物ではなく,定義が無理しているところがあると言える.!クリスタルの場合は自然と思われる局所コホモロジー関手が定義される物の,この関手が現在構成されている物と一致するかは定かでない.また,外部テンソル積が,我々の扱う場合に完全関手でないため,どのようにして導来関手を取るかには問題がある. これらの基本的な関手が構成された後には,藤原型のLefshetzの跡公式を示さなくてはならない.これには消滅隣体関手を構成しなくてはならない.この関手の構成もp進コホモロジー理論において大きな問題であるが,数論的D加群を用いれば古典的な構成の類似をたどれると期待している.
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Research Products
(1 results)