2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しいサブミリ波分光方式に基づく高赤方偏移銀河の研究
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23840007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田村 陽一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10608764)
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Keywords | 電波天文学 |
Research Abstract |
(1)サブミリ波望遠鏡の高感度かへ向けた分光方式の基礎開発 (1-a)周波数変調局部発振器を用いた受信系の構築 ・周波数標準信号を変調しながら高頻度で分光データをサンプルするためのシステム設計を行った。 ・設計に基づき、周波数変調機能を実装した望遠鏡制御ソフトウェアの新規製作および改修を行った。 ・日本国内で望遠鏡レプリカ計算機環境における擬似制御試験を行い、動作を確認した。 (1-b)専用データ処理ソフトウェアの開発 ・東京大学と国立天文台が南米チリで運用するサブミリ波望遠鏡「アステ」において、既存の受信システムの評価試験を行った。この結果、望遠鏡の感度が、大気起源の相関雑音(1/f雑音)、分光帯域特性の周期的変動によって大きく制限されていることがわかった。 ・この評価試験をもとに、専用データ処理ソフトウェアを開発した。本データ処理法と雑音除去法に基づけば、既存の分光法と比較して2.14倍の感度向上(4.6倍の観測時間短縮)が可能であることを示した。 (2)サブミリ波銀河サンプルの多波長データ解析と赤方偏移の推定 ・赤方偏移の推定が困難なサブミリ波銀河種族に対して、ベイズ統計とモンテカルロ法を用い赤方偏移推定の統計的アプローチを行った。 ・ある原始銀河団(赤方偏移3.1)の方向に発見したサブミリ波銀河に対して、赤方偏移の推定を行った。この結果、地球からの距離が50億-120億光年の範囲に多く存在するはずのサブミリ波銀河のある割合く約20%)が、原始銀河団(わずか2億光年程度の狭い範囲)に集中していることを示した。これは、サブミリ波銀河が大質量暗黒物質ハローに選択的に付随することを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記の理由により、H23年度交付申請書「研究の目的」に記載した項目について、順調に進展していると判断する:H23年度研究実施計画として挙げた(1-a)周波数変調局部発振器を用いた受信系の構築、(1-b)専用データ処理ソフトウェアの開発に関して、目標を達成した。また、(2)サブミリ波銀河サンプルの多波長データ解析と赤方偏移の推定に関して、学会・論文発表を通じて順調に成果を発表しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度の研究目標は、(1)本研究課題で開発した分光手法をサブミリ波望遠鏡「アステ」(国立天文台・東大等が、南米チリ・アンデス山中に設置・運用)に実装し、(2)科学的成果を得ることだ。(1),(2)の研究遂行のため、すでに提案書・計画書を提出し、国立天文台との調整を進めている。(1)に関しては、H24年度前半にアステへの実装を行う。(2)に関しては、H24年度前半での科学観測を目標とする。問題点としては、実装・観測時の天候や望遠鏡・観測所インフラの障害などの不確定要素が挙げられる。しかし、次の機会(H24年度後半)に再観測を行う、科学観測の到達目標をリラックスさせる等の対応で、回避が可能だと考える。現時点で、研究計画の変更はない。
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Research Products
(7 results)