2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23840009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多田 靖啓 東京大学, 物性研究所, 助教 (20609937)
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Keywords | トポロジカル絶縁体・超伝導体 / 強相関 / モット転移 |
Research Abstract |
本課題においては、近年注目を集めるトポロジカル絶縁体・超伝導体における相互作用の効果を調べることを目的としている。23年度は、トポロジカル絶縁体の基本的なモデルでの相関効果を解析的・数値的な方法を使って研究した。特に、相互作用の重要でない系では実験的に観測されている有限サイズ効果の相互作用依存性や、有限サイズでのみ現れるウムクラップ散乱の効果などを解析した。前者に関しては、系のサイズが十分小さいときと大きいときの有限サイズ性に起因するギャップの評価を行い、その物理的描像を議論した。有限サイズ効果に対する相互作用の影響はこれまで議論されていなかったが、本研究によって、小さな系に対しては物理的に自然に期待される相互作用依存性が実際に成立していることを示した。また後者に関しては、その存在が期待される新奇状態「エッジ・モット・トポロジカル絶縁体」の可能性を、エッジ間ウムクラップ散乱の効果に着目して議論した。その結果、エッジ間ウムクラップ散乱によっては、エッジ・モット・トポロジカル絶縁体状態は実現される可能性が低いことを示した。本研究は、エッジ・モット・トポロジカル絶縁体状態の自然な定義と物理的に重要と思われる散乱プロセスに着目したものであり、本研究課題の今後の進展の基礎となりうるものである。また、技術的には、強力な数値計算の方法である数値繰り込み群の拡張を行っており、今後の相互作用のあるトポロジカル絶縁体の解析にも応用可能なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
技術的理由:研究開始当初は、従来知られている数値計算の技法が有用であろうと考えていたが、本研究のモデルの複雑さのために計算方法の改良を必要とした。また、計算量が多く、一つ一つのデータを得るために時間を要した。物理学的理由:新奇状態の可能性の探索を行ったが、計算結果はそれについて否定的であったため、その確認に時間を要した。その他:遠隔地の共同研究者間の議論のやりとりに時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度の研究で得られた知見をもとに、さらに詳しくトポロジカル絶縁体・超伝導体における相互作用の効果を調べるとともに、磁性不純物を加えた系などの新しい方向の研究も行う。さらに、カイラル超伝導体における角運動量などの古くて新しい問題にも挑戦し、独自の方向性を見出したいと考えている。また、昨年度の研究の反省を活かして、より問題意識や研究目的を明確にしながら研究を推進する。
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Research Products
(1 results)