2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23840016
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
澤田 宙広 岐阜大学, 工学部, 准教授 (80451433)
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Keywords | 偏微分方程式 / スピンコート / ナヴィエ・ストークス / 回転流体運動 / 最大正則性定理 / 自由境界値問題 / ニュートンポリゴン |
Research Abstract |
スピンコート現象に熱対流を考慮したモデルに対する数理解析を行った。ドイツ・ダルムシュタット工科大学のM.Hieber教授、M.Geissert准教授、L.von Below大学院生らとともに、平行平板内を占める回転流体運動にコリオリカ・遠心力・表面張力・重力・熱対流の効果を考慮したモデルを構築した。このモデル問題に対する、時間局所可解性について研究を進めた。特に、圧力項の評価について、以前の研究結果よりも更に精密な議論を行い、得られた解の数学的厳密性を深く考察した。線形化問題の解について、より詳しい評価を与えることができたので、それを用いて非線形の問題に対する解の存在時間に対する既存の結果の改良できた。熱対流効果を考慮したモデルの数理科学的考察は、「不安定性」定理の獲得に至るための大事なファーストステップである。 本研究の主要な目的である「解の一意存在定理」の証明には、近年発展してきた最大正則性の理論を適切に改良して応用した。即ち、ラプラス変換を行って同値のレゾルベント方程式を解く事を試みた。レゾルベント問題の線形化モデルを解くにあたって自由境界を固定化する必要があるが、将来の研究で蒸発効果を考慮したモデル扱うために、半澤変換を用いて平行平板領域に固定した。更に、線形の問題ではあるが、圧力項の評価を詳細に導くため、領域の分割を行わずに解を構成するという工夫が必要となった。主要な数学的道具は、フーリエ掛算作用素の理論である。様々な関数空間におけるフーリエ掛け算作用素、ニュートンポリゴンの方法、作用素の補間定理などを応用して「ある程度の滑らかさを有する時間局所解の一意存在定理」を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した計画のうち、主目的である純粋数学による研究活動は方針通り順調に進展している。ただし、数値実験・物理実験等との比較とそれによるモデルの精密化は未だ行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
回転流体モデルに対して、更に蒸発・潜熱の影響を組み込んだ、より複雑なモデル、更には粘性係数が変化する非ニュートン流体の回転運動モデルについての数理解析を行う。それらのより複雑なモデル問題に対する数理解析的解決を目指す。より多くの影響を考慮した実験結果に近いモデルを考察することにより、スピンコート現象の背後に潜む不安定性のメカニズムを詳細に追う。特に、液体表面の熱分布の不均一性が不安定性を引き起こすとの理論が物理学者らによって提唱されているが、その説を数理解析学的立場から検証する。得られた解と実際の現象との比較も行う。
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