2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23840020
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船野 敬 京都大学, 数理解析研究所, 特定研究員 (40614144)
|
Keywords | 測度の集中 / 多様体の収束 / Laplacianの固有値 / Ricci曲率 / 測度距離空間 / 曲率次元条件 |
Research Abstract |
本年度は塩谷隆氏(東北大)と共同でobservable距離に関する多様体の収束理論の研究を行った. Observable距離の定義から測度距離空間の列が測度の集中現象をおこしていることとこの距離に関して一点から成る空間に収束することは同値である.この距離に関する収束は測度の集中現象と従来のGromov-Hausdorff収束の理論の一般化と思える.近年,Lott-VillaniやSturmによって確率測度付きの弧長空間に対してRiemann多様体におけるRicci曲率がK以上であるという条件CD(K,∞)が導入され,研究が活発に行われている.我々はCD(K,∞)という条件がobservable距離に関する収束で保たれることを示した.特にこれらの空間列の極限は連結となる.一方,閉Riemann多様体の列のLaplacianの第k固有値が無限大に無限大に発散していてある条件を満たすとき,observable距離に関して高々k点からなる距離空間に収束することがわかる.非負Ricci曲率と第k固有値が無限大に発散すると仮定すると我々の結果から極限空間は1点からなることがわかり,特にこの閉Riemam多様体の列は測度の集中現象を起こしていることがわかる.E.Milmanの結果により非負Ricci曲率を持つ閉Riemam多様体の列が測度の集中現象を起こしていると,第1固有値が無限に発散することがわかっているので,これらのことによりLaplacianの固有値の間の次元普遍不等式を得たことになる.これらの結果は私が申請当初挙げた次の問題の一つの答えと応用を与えたと考えることができ,当初の目的の一つを達成することができたと言える:閉 Riemann多様体の列M_nがある測度距離空間Mにobservable距離に関して収束した際に,M_nの解析的または幾何学的性質はどの位極限空間Mの解析的または幾何学的性質に近いか?特に,これらの性質の中で収束で保たれるものは何か?
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に掲げていたことを共同研究ながら実際に証明することができ、論文としてまとめることができた。2012年度には投稿したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
深谷賢治氏は断面曲率が下に抑えられた閉Riemann多様体の列が測度付きGromov-Hausdorff収束しているとLaplacianの固有値と固有関数も収束していることを示した.Cheeger-Coldingにより深谷氏の結果がRicci曲率の下限の下で一般化されている.平成24年度はこれらの結果をobservable距離に関する収束にまで拡張する.具体的な方法として,断面曲率の下限の仮定の下でまず山口孝男氏や大津幸男氏などによって得られていたfibration定理をobservable距離に関して示すことを目標とする.
|