2011 Fiscal Year Annual Research Report
次世代中性子電気双極子能率探索実験のための新型中性子反射鏡の開発研究
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23840030
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉岡 瑞樹 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (20401317)
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Keywords | 超冷中性子 / DLC |
Research Abstract |
本研究の目的は、中性子反射鏡として有望な重水素化Diamond Like Carbon (DLC)薄膜の成膜技術を世界に先駆けて行うことである。当該年度にて重水素化DLC薄膜試料を製膜パラメータを変えて複数製作し、中性子反射鏡としての特性を以下の方法により系統的に調査した。なお、製膜パラメータに関しては、今年度はバイアス電圧のみに集中した。1、RBS/ERDA法による元素比率組成の測定。測定は筑波大学のタンデトロン加速器を用いて行った。2、X線反射率法による密度および膜厚の測定。測定は理化学研究所のSmartlab装置を用いて行った。3、中性子反射率法による核力ポテンシャルの測定。測定は京都大学原子炉実験所および茨城県東海村のJ-PARC物質生命科学研究施設にて行った。比較のため、同様の測定を軽水素DLC薄膜についても行った。以上の測定結果より、(1)重水素DLCの核力ポテンシャルは軽水素DLCのそれに比して当初の予測通り高いことを確認した。(2)1および2の結果による核力ポテンシャルめ推定値と3の結果を比較し、線形性が良いことを確認した。(3)バイアス電圧がおよそ0.5kVの時に膜密度が最大となることを確認した。また、今後の検討課題を以下に挙げる。(A)(1),(2)の結果では測定値と推定値の問におよそ15%の差があり、原因については目下調査中である。(B)非鏡面反射の評価については3の測定でデータはすでに同時に取得されており、現在詳細解析中を行っている。以上の結果を踏まえて、次年度には重水素DLC薄膜による超冷中性子導管の試作、性能評価を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイアス電圧と測定結果との相関で多少理解できていない部分はあるが、同一製膜パラメータでの再現性は良く、当初の予定通り高い核力ポテンシャルを持つ重水素化DLC薄膜の製膜技術は確立できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では当初の予定通り重水素化DLC薄膜による超冷中性子導管を試作し、その性能評価を行う。重水素化DLCの製膜パラメータまではこれまでに得られている最良のものを用いる予定であるが、平行してより最適な製膜パラメータを模索する。
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