2011 Fiscal Year Annual Research Report
差集合族とその拡張概念に基づくアダマール行列の新しい構成法の提案
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23840032
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
籾原 幸二 熊本大学, 教育学部, 講師 (70613305)
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Keywords | 差集合 / 差集合族 / アダマール行列 / 有限体 / ガロア環 / ガウス和 / 平方剰余型差集合 / アダマール型差集合 |
Research Abstract |
本研究の目的は,「差集合族」と呼ばれる組合せ構造の拡張概念を利用したアダマール行列の新たな構成法を提案することであった.本年度の研究は,研究実施計画に基づき,研究当初に既に得られていたSzekeresの差集合族の構成法の一般化を,Yamamoto-Yamada, 1988の標数4のガロア環上の差集合に適用した場合,どのような組合せ構造が得られるかを計算機を援用しながら調べ,予想していた通りグループ分割型差集合族を成すことを証明することに成功した.この結果は,新たなパラメータを持つグループ分割型差集合族の無限系列が得られるという点で重要である.また,Yamamoto-Yamadaの差集合はアダマール型と呼ばれ,直ちにアダマール行列が構成できることが知られている.このことに注意し,我々の得たグループ分割型差集合族の構成法の逆をたどることで,差集合族の存在性を仮定したアダマール行列の構成法が得られた.これによって,「本年度の新しいアダマール行列の構成法を提示する」という研究目標を達成できた.この研究に関する結果について,現在金沢大学の山田美枝子教授と共同で論文を執筆中である. また,Zhejian大学のFeng准教授,Delaware大学のXiang教授との共同研究で,アダマール行列を生成するskewアダマール型差集合と呼ばれる差集合の構成法の提案を行った.このskewアダマール型差集合は,つい最近まで,数十年の間平方剰余型差集合しか知られていなかったが,今回の我々の研究で,その平方剰余型差集合とは非同型のskewアダマール型差集合の無限系列を発見し,新たなアダマール行列の構成法を得た.この結果は,有限体上のガウス和と呼ばれる指標和の計算に基づいており,代数的整数論の視点からも興味深い結果であると言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「平成23年度の研究計画」が確実に遂行できたため.1年目ではSzekeresの変形法の一般化を適用させる対象の差集合を,Yamamoto-Yamada, 1988が得たガロア環上の差集合に制限し,その組合せ構造を調べ,グループ分割型差集合族をなすことを証明することを目標にしていたが,当初の計画通り,計算機を援用し,構造を明らかにすることで証明を完結させた.また,逆の操作をたどって,本来の目的であったアダマール行列の新たな構成法の提示に成功した.この研究成果について既に金沢大学の山田美枝子教授との共著で論文を作成中であり,平成23年度の研究目標は達成され,達成度は順調であるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
Szekeresの変形法の一般化を適用させる対象の差集合をより標数の高いガロア環上の差集合に適用することを,2年目の計画としており,また,得られる組合せ構造がグループ分割型差集合族の更なる一般化になっているという予想を立てていた.しかしながら,既に計算機によってその予想の反例が挙がってしまったために,一般的には予想が成立しないことが分かっている.今後の問題点として,どのような条件を加えれば,予想が成立するのかを決定することが挙げられ,計算機を援用しながら,その条件を見極めることが必要である.また,異なる方向性として,Feng(Zhejiag大学)やXiang(Delaware大学)らとの共同研究で部分的に明らかになった,Paleyパラメタをもつアダマール型差集合の構成法をさらに一般化することで,非同型なアダマール行列の新たな構成法の発見を継続して行っていく.
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