2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23840033
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
室 裕司 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50385530)
|
Keywords | 希土類 / 近藤半導体 / 新奇な相転移 / カゴ状構造 |
Research Abstract |
斜方晶の希土類内包カゴ状構造をとるCeT2A110(T=Fe,Ru,Os)がいずれもCe4f電子と伝導電子との強い相関による擬ギャップを低温で形成し、さらにT=Ru,Osはそれぞれ27K,28.5Kで相転移を示す。この相転移について、Ce価数と構造の変化を引き金としたこれまでのCe化合物では見られない特異な磁気転移であることが強く示唆されている。本研究では、擬ギャップの形成および特異な相転移の機構を解明するために、元素置換による擬ギャップと相転移の変化を調べた。 まず、CeRu2Al10およびCeOs2Al10のRu,OsサイトをFeで置換した試料を作製し、中性子散乱実験を行った。CeRu2Al10およびCeOs2Al10では、中性子非弾性散乱スペクトルにスピンギャップよるピークが、相転移温度より少し高温から観測されることが知られている。Fe置換した試料では、相転移温度がほとんど変化しないにもかかわらず、この非弾性散乱ピークが2本に分裂したスペクトルを観測した。Fe置換とともに転移温度以下での電気抵抗は金属から半導体的な振る舞いに変化することから、格子定数の減少にともなってスピンギャップとチャージギャップが分離したと考えられる。 一方、CeRu2Al10のAlサイトをGaで置換した試料を作製したところ、7%のGa濃度まで置換できた。格子定数は0.2%の拡大にとどまったが、相転移温度は25Kまで減少し、また擬ギャップの大きさも50Kから20Kまで減少した。つまり、AlサイトをGaで置換することで、相転移と擬ギャップ形成の両方が抑制されることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希土類化合物の試料作製および単結晶育成に必要な機材を整備することが出来、それによって中性子散乱や光電子分光などの共同研究が順調に進めることが出来るようになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、研究計画の1つである低温電子線回折実験によるCeT2Al10の電荷状態の研究を進めていく。液体ヘリウムを用いた15Kまでの電子線回折装置は乱東京大学物性研究所にのみ設置されでいるため、この研究は、東京大学および東京理科大学と共同で行う。また、さらに低温での実験を可能にするための改良にも参加する。
|