2011 Fiscal Year Annual Research Report
非線形シュレディンガー方程式における定在波の安定性解析
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23840037
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
菊池 弘明 東京電機大学, 情報環境学部, 助教 (00612277)
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Keywords | 非線形シュレディンガー方程式 / 基底状態 / 励起状態 / 軌道安定性 / 爆発 / 散乱 / ポテンシャルの井戸 / 変分法 |
Research Abstract |
平成23年度は主に次の3つの研究を行った。 1つは,福泉麗佳氏(東北大)とFouad HadjSelem氏(ブレイズパスカル大)との共同研究の下、Diriclet境界条件付きの単位球上の非線形シュレディンガー方程式の励起状態の軌道安定性について調べた。特に、空間1次元においては、どの励起状態も基底状態を用いて表せるという性質を用いることで、べき乗型非線形項の指数をpとすると、p>5のときは、振動数が大きければ、どの励起状態も軌道不安定になり、1<p≦5のときは、特定の摂動の下では安定となることが分かった。 次に、赤堀公史氏(静岡大)とSlim Ibrahim氏(ビクトリア大)と名和範人氏(阪大)との共同研究の下、非線形シュレディンガー方程式の爆発と散乱問題について調べた。これまではH^{1}劣臨界の非線形項について研究してきたが、今年度は、2重べきの非線形項で、一方がH^{1}臨界、他方がH^{1}劣臨界であるようなものについて取り扱った。H^{1}臨界の非線形項がある場合は、コンパクト性に関することなど幾つか問題が生じるが、それらを克服し、H^{1}劣臨界の場合と対応する結果を得ることが出来た。具体的には、「ポテンシャルの井戸」と呼ばれる初期値のクラスを定義する。ポテンシャルの井戸は2つの集合の直和で表され、そのうちの一方から出発した解は非有界なものとなり、他方から出発した解は有界になり、さらに、散乱状態を持つことが分かった。また、その系として、基底状態が不安定となることも示すことが出来た。 最後に、Fouad HadjSelm氏(ブレイズパスカル大)とJuncheng Wei氏(香港中文大學)との共同研究の下、H^{1}超臨界の非線形項を持つポテンシャル付きの楕円型方程式について調べた。具体的には、上記方程式が原点で発散するような特異解が唯一つ存在することが分かった。このことは、正値解の分岐構造を調べるうえで、役に立つことが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単位球上のシュレディンガー方程式の定在波の安定性の研究において、励起状態については、部分的だが軌道安定・不安定性を解析することが出来たが、当初の目標であった全ての振動数に対して安定であることを示すことが未だに解決できていない。方程式を簡単な方程式に変換することにより解析できるのではないかと予想していたが、もうすこし工夫が必要だと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
単位球上のシュレディンガー方程式の基底状態の安定性については、Juncheng Wei氏(香港中文大學)のところへ滞在し、議論したいと考えている。そして、励起状態の安定性については、一般のものを解析するだけでなく、ボルテックス解などの特別な形をしたものを限定することで何か興味深い結果が得られるかどうかを調べたい。また、最近では、Nakanishi-Schlag('11)らが基底状態を超えたエネルギーでの解の挙動を解析した興味深い結果が得られている。そこで用いた手法は、これまで赤堀氏(静岡大)らとの共同研究で用いたものを発展させたものであり、今後はその手法が励起状態の安定性解析について役立つかどうかを調べたい。
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