2011 Fiscal Year Annual Research Report
周期的シュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究
Project/Area Number |
23840042
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
新國 裕昭 同志社大学, 理工学部, 助教 (90609562)
|
Keywords | シュレディンガー作用素 / 点相互作用 / スペクトラルギャップ / バンド構造 / モノドロミー行列 / 回転数 / クローニッヒ・ペニーハミルトニアン / 周期ポテンシャル |
Research Abstract |
平成23年度は,「(I)周期的一般点相互作用に従う1次元シュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究」および「(II)Zigzag nanotube上のシュレディンガー作用素のスペクトルについての研究」を行いました。当該研究の主な目的は,ポテンシャルが周期性を持つ場合のシュレディンガー作用素のスペクトル構造を解明することです。Floquet-Blochの定理により,周期的シュレディンガー作用素のスペクトルはバンド構造を持ちます。すなわち,スペクトルは加算無限個の有界閉区間(バンド)の和集合として表され,連続する2つのバンドは一般にスペクトラルギャップによって隔てられます。考える周期ポテンシャルによっては,スペクトラルギャップは空集合に退化することがあり,この事は対応するシュレディンガー方程式の解の周期性と密接な関連性があります。本年度は,(I)について,回転行列で与えられる点相互作用を考え,基本周期内に4個の点相互作用がある場合に,下から数えて2番目と4番目のスペクトラルギャップが退化する例があることを示しました。2個のスペクトラルギャップが退化する例はこれまでに見つかっていない新しい例で,このような例がある事はモノドロミー行列を8つの行列の積に分解する手法で示すことができることがわかりました。4個の周期的点相互作用を扱う場合には,現時点では点相互作用の配列に何らかの仮定をする必要がありますが,偶関数の周期的ポテンシャルの場合の解析は古くから行われているため,今後は同様の手法によってその場合の解析を行うなどの工夫が必要であると考えられます。次に,(II)のテーマについては,Zigzag nanotube上のシュレディンガー作用素のスペクトル理論についての関連する論文をいくつか読み,特に,Zigzag nanotube上のシュレディンガー作用素はZigzag nanotubeを構成する基本領域上のシュレディンガー作用素の直和で表されることがわかりました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(I)のテーマについては,得られた結果を研究集会「スペクトル・散乱理論とその周辺」「ランダム作用素のスペクトルと関連する話題」等で発表した。(II)のテーマについては,関連する論文をいくつか読み,Zigzag nanotube上のスペクトル理論に関する基礎的な結果がいくつか理解できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(I)のテーマに関しては,基本周期内に4個の点相互作用がある場合をもう少し深く研究することが可能であると思われる。例えば,偶関数となるような点相互作用の場合に,点相互作用を一般化して解くことができるのではないかと思われる。 (II)のテーマに関しては,Zigzag nanotube上のシュレディンガー作用素のスペクトル理論についてもう少し論文を読み進める必要がある。これまでの研究では,Zigzag nanotubeの各辺において,周期ポテンシャルは同一のものを考えている研究しかないため,基本領域に存在する3辺において異なるポテンシャルがある場合を考える等は重要な事であると考えられる。今後は,この方向性で解析を進めていく予定である。
|