2011 Fiscal Year Annual Research Report
異常なヒステリシスを伴う新奇一次相転移現象の理論的解析
Project/Area Number |
23840054
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山本 大輔 独立行政法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 基礎科学特別研究員 (80603505)
|
Keywords | 冷却Bose気体 / 光学格子 / リエントラント一次相転移 / 異常な履歴現象 |
Research Abstract |
近年、双極子モーメントが非常に大きい極性冷却気体に関する実験が盛んに行われるようになってきた。我々は以前、三角光格子中の極性Bose気体の系において超流動-固体-超流動間のリエントラント相転移が二段階一次相転移になることを示した。さらに、この相転移過程における履歴現象を詳細に調べ、ヒステリシスループを伴わない新奇な振る舞いを示すことを明らかにしている。この「異常な履歴現象」では、相転移の経路が初期状態に依存するだけでなく相転移の有無自体が初期状態に依存する。 本年度は研究計画通り、主に立方格子中の反強磁性スピン1Bose気体を解析することで、異常な履歴現象の発現条件と数学的構造を明らかにした。この系では、以前解析した三角光格子系とは異なり幾何学的フラストレーションも超固体相のような量子共存相も存在しない。それにも関わらず、この系の超流動-Mott絶縁体-超流動間の二段階一次相転移においても以前発見したものと同様の異常な履歴現象が存在することが分かった。したがって、異常な履歴現象は「リエントラント一次相転移系」全般の持つ新たな固有の相転移現象であるといえる。また、Landau理論による定式化にも成功し、エネルギー関数のべき指数ではなく係数の振る舞いが重要であることを示した。これらの成果は統計力学基礎論的観点からも重要であるとともに、次年度の研究計画である「磁性体における異常な履歴現象探索」に対しても非常に有益な示唆を与えるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度研究計画では「異常な履歴現象」の発現条件・数学的構造を明らかにすることが目的であったが、上述した通り完全に遂行することができた。加えて我々の開発したクラスター平均場法を、スケーリングを用いてさらに著しく改良することに成功し、次年度の研究計画を遂行するにあたっての下準備まで完了させることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在のところ本研究課題の遂行状況は非常に良好であり、特に大きな問題点は存在しない。しかしながら、本年度の研究成果に関する論文一報が未だ作成途中であり、本年度中の完成・投稿が急務であるといえる。
|