2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子の構造から探るタングステン安定同位体比の古海洋酸化還元の指標としての可能性
Project/Area Number |
23840058
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
柏原 輝彦 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, ポストドクトラル研究員 (70611515)
|
Keywords | XAFS / 同位体 / タングステン / 鉄マンガン酸化物 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現在の酸化的海洋環境においてタングステンの濃度や同位体比に大きな影響を与える鉄マンガン酸化物への吸着反応に着目し、吸着の際にタングステンの同位体比が変動するかどうかを、そのメカニズムと共に、分子の構造と同位体比の両面から明らかにすることである。 本年度は、主に実験室系における基本的な検討を行った。まず、鉄マンガン酸化物の主な構成成分である水酸化鉄とマンガン酸化物を実際に合成し、タングステンを吸着させた。その後、固相および液相それぞれについて、タングステンの構造、吸着量を放射光実験およびICP-MSによって調べた。微量に含まれるタングステンの吸着構造の詳細解析のために、結晶分光器を用いた新規分析手法を導入し、天然の鉄マンガン酸化物中のタングステンの構造解析に初めて成功した。それにより、タングステンは水酸化鉄とマンガン酸化物の両固相に対して、吸着の際に分子の構造変化を示すことを明らかにした。これは、同族元素であり、古海洋の酸化還元指標として広く用いられているモリブデンとは対称的であり、これまでに一切報告されてこなかった現象である。この結果に基づくと、化学的性質の似通ったモリブデンとタングステンは、海洋の酸化還元状態によっては、同位体的な挙動はまったく異なる可能性がある。このように、今後、化学的に類似しながらも、同位体的挙動が異なるモリブデンとタングステンを合わせて分析することで、地質学的試料のもつ酸化還元状態に関する情報をより詳細に引き出せる可能性があることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標である分子の構造解析を予定通り実現し、現在論文を投稿中であるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、タングステンの同位体比を測定し、今年度明らかにした分子の構造情報とどのように対応するのか、天然試料中でも同様の現象が見られるか、などについて明らかにする予定である。
|
Research Products
(6 results)