2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23850007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大黒 耕 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60614360)
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Keywords | 分子糊 / 光応答性 / フォトクリックケミストリー / 抗癌剤 |
Research Abstract |
生体高分子表面に接着するためのグアニジニウム基とフォトクリックケミストリーを利用した光重合における反応点であるテトラゾール、オレフィンのそれぞれを有する2種類の分子糊モノマーを合成することに成功した。これらの分子糊モノマーを混合した水溶液に一定時間紫外光を照射することで、生成物であるピラゾリン由来の蛍光が観察されるようになった。また、動的光散乱法による粒径測定の結果、光照射後に平均粒径が顕著に増大していることが明らかになった。これらの結果より、期待通り分子糊の光重合が達成されていることを示した。同様の戦略に基づき、テトラゾールとオレフィン部位の両者を1分子内にもつ分子糊モノマーの合成にも成功し、より高効率な光重合を達成した。デオキシリボ核酸(サケ由来)を生体高分子のモデルとして分子糊モノマーと混合し、同様に光重合を行い、アガロースゲル電気泳動にて解析したところ、光照射の有無で核酸の泳動度が変化することが明らかになった。これは、光重合によってグアニジニウム基を多数有するポリマーが系中で生成し、多価相互作用による強い接着が生じたことを示唆する結果である。以上の結果より、本研究課題の基本戦略である、「光照射によって分子糊の接着性を生み出す」ことに成功した。これは、「研究の目的」にあるように、分子糊の非特異的な接着性によって引き起こされる副作用や効率の低下という問題を一挙に解決し、任意の組織・細胞で選択的に機能する抗がん剤の実現性を示すと同時に、高分子医薬に特有の新規な作用機序による薬剤活性と低分子医薬の優れた細胞内動態を併せ持つ、新たな薬剤治療戦略の有効性を示す成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子糊モノマーとして、当初の予定に加えて新たに1種の化合物を合成したが、これによって目的とする光重合の効率を大きく向上させることに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回合成に成功した分子糊モノマーについて、引き続き重合挙動の調査を行う。特に生細胞内での光重合の可否や二光子吸収過程を経る重合が可能かどうかについて検討する。 また、同様の戦略に基づいて、光刺激に応答して接着性を大きく向上させる「光反応性分子糊」の開拓に着手する。これは、生体内の希釈・拡散環境下においても効率良く癌細胞の増殖を抑制できるものと期待される。
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Research Products
(3 results)