2011 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合性テンポラリーネットワークを用いたDNゲルのレオロジーとダイナミクス
Project/Area Number |
23850008
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
信川 省吾 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (50609211)
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Keywords | 高分子構造・物性 / レオロジー / 水素結合 / ゲルネットワーク |
Research Abstract |
平成23年度は、分岐鎖を有するアクリル共重合体を種々の架橋割合で作成し、その水溶液の粘弾性特性を調べた。分岐鎖がないポリアクリルアミド水溶液は、10wt%までのいずれの濃度でも、ゼロせん断粘度を測定することができたが、分岐鎖を有するアクリル共重合体では、一定濃度以上で平坦弾性率が観測された。分岐鎖同士が凝集することで、物理架橋が発生し、ゲル化に必要なネットワークが構築されたためと考えられる。平成24年度は、この物理ゲル中に、架橋されていない自由な線状高分子をブレンドし、ゲルの成分濃度と力学的性質の関係を調べていく予定である。 一方、架橋点内部や、自由鎖のダイナミクスはゲルの力学強度や安定性に関係していると考えられる。そのダイナミクスを定量的に評価するために、試料にひずみを印加した状態における誘電緩和測定を行うことを考え、レオメーターも誘電緩和装置を組み込んだ。誘電緩和測定を用いることで、高分子の極性部分のダイナミクスを評価できる。大きなひずみを加えたときに、架橋点が不安定化し、一時的に架橋が弱くなると予想される。したがって、市販のレオメーターでゲルに大変形を加えながら誘電緩和測定を行うことで、架橋点や自由鎖のダイナミクスを評価できる。24年度はゲルの破壊挙動と局所運動の関係を明らかにすることを目指す。ただし、誘電緩和測定はイオン性の不純物に敏感であり、水溶液系よりも非極性溶媒を用いる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
物理ゲルの分子設計が当初の予定とは異なり、用いる溶媒の変更や合成方法の修正が必要であったため、現在検討中である。水素結合系を予定していたが、溶媒を非極性に変更する可能性や、非溶媒系に変更することも考慮している。誘電率測定に関しては、試料を設置するセルや温調器は完成させることができた。力学緩和測定については、必要装置や実験条件の確認は完了しており、試料ができ次第直ちに測定可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
溶媒を用いない非溶媒系でまず検討を行い、その際に物理架橋点として水素結合能を有するアミド基を用い、マトリックスとなる化学架橋ネットワークにポリスチレンなどを用いる。ただし、この際に、共通溶媒を用いることで分子レベルで混合したDNゲルを得る。さらに、この試料に対して、力学ひずみを印加させながら、誘電緩和測定を行い、大変形下における架橋点内部の様子や、自由鎖のダイナミクスを検討する。その際、架橋点の形成と破壊に対応する特性時間や、その活性化エネルギーを評価することにより、DNゲルの安定性や力学特性を評価、検討する。
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Research Products
(3 results)