Research Abstract |
本研究では,摩耗低減剤として,米ぬかを原料とする硬質多孔性炭素粒子を熱可塑性樹脂に充填することにより,低摩擦と極めて優れた耐摩耗性を両立した新しい樹脂系複合材料を開発することを目的としている.本年度では,自己潤滑性を有するポリアミド66(PA66)樹脂に,米ぬかを原料とする硬質多孔性炭素粒子(rice bran ceramics, RBセラミックス)を充填し,射出成形することにより,RBセラミックス粒子充填PA66樹脂を作製した.そして,万能試験機やビッカース硬度計を用いて,作製されたRBセラミックス粒子充填PA66樹脂の機械的性質を明らかにするとともに,摩擦試験機を用いて,高炭素クロム軸受鋼球を相手とした大気中無潤滑下における摩擦・摩耗特性を明らかにした.PA66単体,及び,RBセラミックスに比べ硬質かつ等方性であるガラスビーズを充填したPA66樹脂との比較の結果,特に硬さにおいて,RBセラミックス粒子充填PA66樹脂は,最も高い値を示すことが判った.RBセラミックス粒子のヤング率は,約11GPaとガラスビーズに比べ低い値であり,また,粒子表面には凹凸があることから,樹脂系複合材料の硬さの向上において,充填する粒子の硬さのみならず,母材と粒子との間の密着性が重要となることが判った.また,摩擦試験を行った結果,RBセラミックス粒子充填PA66樹脂は,PA66単体及びガラスビーズ充填PA66樹脂に比べ,低摩擦,優れた耐摩耗性を示すことが判った.その摩耗面の詳細な観察より,RBセラミックス粒子の充填により大型のロール状粒子の形成が抑制され,耐摩耗性が向上することが示唆された.このようなRBセラミックス粒子の充填による耐摩耗性の向上は,硬さの増加によるものであり,ガラスビーズとの比較より,RBセラミックス粒子は,樹脂材料の飛躍的な耐摩耗の向上を実現する粒子系充填剤として期待されることが判った.
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