2011 Fiscal Year Annual Research Report
フレキシブル基板上における高効率タンデム型太陽電池の創製に向けた基盤技術の構築
Project/Area Number |
23860011
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
都甲 薫 筑波大学, 数理物質系, 助教 (30611280)
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Keywords | 太陽電池 / 結晶成長 / 環境材料 |
Research Abstract |
太陽電池の普及拡大には、高い変換効率を有するフレキシブル薄膜太陽電池を、安全かつ安価な材料で創製することが鍵となる。そこで申請者は、BaSi_2/Ge/金属シートから成る新しいタンデム構造を提案している。本研究では、実現に向けた最重要課題となるBaSi_2/Ge/金属シート構造の結晶成長技術の構築に目的を定め、研究を遂行している。このとき、BaSi_2はGeの(111)面方位にエピタキシャル成長可能であるため、Ge結晶層の面方位を(111)面に制御することが重要となる。 本年度においては、Si薄膜の(100),(111)結晶方位制御技術として実績のあるAl誘起成長(AIC)法をGeへ応用し、Ge層の(111)面方位制御を検討した。AIC法をGeやSiGeに適応した報告は多々あるが、これまで方位制御に成功した例はない。申請者は、SiのAIC成長で培ったノウハウを最大限に活用すると共に、成長温度や膜厚、Al層形成条件等がGe層の結晶方位に与える影響を系統的に調査し、最適化することによって、(111)面方位に99%配向したGe薄膜の形成を実現した。 Geの光吸収係数(10cm^<-1>@0.8eV)を考慮すると、十分な光電変換効率を得るには3umの膜厚が必要であるため、本Ge(111)層(30nm厚)をテンプレートとして化学的気相成長(CVD)法を用いてGe層のホモエピタキシャル成長を行い、厚膜化する。断面透過型顕微鏡(TEM)観察から、テンプレート層の結晶欠陥は基板と平行な(111)面欠陥のみであることが判っている。従って、得られたGe(111)テンプレート上に化学気相成長(CVD)でGe層を厚膜化する際、欠陥は縦方向には引き継がれない。高品質の光吸収層形成が期待される成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、Al誘起成長法で形成したSi(111)薄膜をGe層のエピタキシャルテンプレートとして用いる予定だった。本プロセスでは、SiとGeの格子定数差による欠陥導入は避けられない。しかし本年度は、Al誘起成長法をGeに適応し、種々のパラメータを最適化した結果、Ge(111)薄膜を直接的に形成することに成功した。化学気相成長を重畳することにより、高品質の光吸収層形成が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において形成したGe(111)薄膜(30nm)をテンプレートとし、Geの化学気相エピタキシャル成長を誘起する。Ge化学気相成長の条件(GeH_4ガス流量、基板温度)と膜質の相関を系統的に調査し、高品質のGe光吸収層(3um)を創出する。得られたGe層について、簡易デバイスを作製し、光学特性を調査する。 更に、本Ge(111)層上に、タンデム型太陽電池の上部層となるBaSi_2層の分子線エピタキシャル成長を行う。BaSi_2とGeの相互拡散を極力抑えて急峻なBaSi_2/Ge界面を取得するため、成長条件の検討を行う。研究が円滑に進行した場合、BaSi_2/Geのタンデム構造における光学特性まで評価することを目標とする。
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