2011 Fiscal Year Annual Research Report
多層化による核融合炉ブランケット配管用トリチウム透過防止膜の高度化研究
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23860017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近田 拓未 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (20614366)
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Keywords | トリチウム / 薄膜 / ブランケット / 水素透過 / 酸化エルビウム |
Research Abstract |
本研究は、核融合炉ブランケットにおけるトリチウム透過漏洩の問題に対して、・近年見出されたトリチウム透過防止膜の多層化による高性能、高信頼性の付与に着目し、実機導入を目指した成膜手法を開発すると同時に、多層膜中の水素同位体透過機構を解明することを目的としている。平成23年度は、セラミックスと金属の薄膜を多層化することが可能か検証した後に、多層膜の水素透過挙動を調べた。これまでの研究で高いトリチウム透過防止性能と熱サイクル健全性が示されている酸化エルビウムと、基板および酸化エルビウムと熱膨張率が近い鉄、バナジウム、エルビウムを薄膜材料として気相法で酸化エルビウム、金属の順に成膜したところ、いずれも剥離のない均一な層構造が得られた。水素透過試験においては、金属膜の酸化の有無によって透過挙動が大きく異なった。金属膜が酸化しない場合は酸化エルビウム薄膜のみの透過挙動が見られたが、最表面が酸化した場合は膜厚が非常に小さいにもかかわらず酸化エルビウム薄膜の透過防止性能を5倍程度向上させることが示された。これは金属酸化膜と酸化エルビウムが独立に水素透過に寄与しているためと考えられる。一方で、金属エルビウムを酸化エルビウムの上に成膜させた場合は、透過試験後に金属エルビウム層が完全に酸化され、酸化エルビウムの単一層に変化し、透過挙動においても酸化エルビウム単一層と同様となった。以上より、層構造が変化しない複層膜を作製することができれば、トリチウム透過防止性能、ブランケット材料との化学共存性といった諸性能を多層膜の各層に分配することができることが示唆された。この結果は、薄膜材料の組み合わせの自由度を広げ、単一材料への依存をなくすことができるという知見となる点できわめて重要な結果である。さらに、液体リチウム鉛との共存性試験では、500℃以下において最表面の鉄薄膜が防食膜となることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気相法による多層膜の作製に成功し、また詳細な水素透過挙動についても整理された結果が得られている。更に多層化した試料については作製に成功し解析中だが、次年度に予定している液体ブランケット共存性試験を実施済みであり、多層膜の実用化に向けての準備は順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、より多層化した試料の水素透過挙動、液相法による酸化エルビウム膜の作製、熱サイクル試験が課題となる。3層以上の多層膜は海外の共同研究先との調整が必要であるが、予備試験はすでに前年度に実施済みであり今後も継続して進めていく。液相法による酸化エルビウム薄膜の作製は、前年度で基本的なパラメータの選定は最適化されたため、今後多層化を実施していく予定である。熱サイクル試験については、現存の装置で実施可能である。
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