Research Abstract |
本研究では,コンビナトリアル手法に適用可能な,薄膜機能性材料の相変態温度の高速評価法について研究を行った.サンプルとしてTi-Ni-Pd薄膜形状記憶合金を選択し,加熱・冷却サイクルにおいて双方向のマルテンサイト変態温度の評価を目指した.評価は,サーモグラフィで加熱・冷却中のサンプル表面を観察し,相変態を放射率変化として検知する手法を用いた. 単一組成サンプルで原理確認を行った結果,従来の測定法である示差走査熱量測定法と比較して変態温度の差異5K以内,温度ヒステリシスの差異6Kで,双方向の変態温度の測定に成功した.そこで,サンプルサイズ1mm角の組成の異なる薄膜形状記憶合金を集積した,薄膜ライブラリを用いて同様の測定を行った.薄膜ライブラリは,合金構成元素をそれぞれ単独のターゲットから同時に成膜し,薄膜合金を得る,合成スパッタ法を利用し,各ターゲットの成膜位置を調整することで発生する組成の傾斜を利用して製作した.この薄膜ライブラリで測定を行ったところ,Pdの組成36~47at.%の間で,変態温度約50K,温度ヒステリシス約50Kの分布を測定することに成功した. 本成果は,従来,1サンプル毎に加熱及び冷却をしながら示差走査熱量測定法により測定していた変態温度を,サーモグラフィを用いることで,簡単に複数サンプルを同時評価することを可能にした点で意義が大きい.薄膜形状記憶合金を利用する上で,その駆動性能を大きく左右する熱特性は非常に重要な物性である.一方で,組成や添加元素によってその熱特性は大きく変化することが知られている.そこで,本研究を利用すれば,簡単に広い組成範囲にわたり熱特性を評価することが可能であり,薄膜形状記憶合金の開発や,アプリケーションに相応しい薄膜形状記憶合金の探査に活用することができる.
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