2011 Fiscal Year Annual Research Report
形状記憶チタン合金の侵入型元素添加によるナノドメイン形成と異常温度超弾性の解明
Project/Area Number |
23860021
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田原 正樹 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (80610146)
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Keywords | チタン合金 / マルテンサイト変態 / 形状記憶合金 |
Research Abstract |
本研究の目的は、侵入型原子を添加したチタン合金において発現する、形状記憶特性の異常な試験温度依存性の原因を解明することである。通常の形状記憶合金は試験温度の上昇に伴って、形状記憶-超弾性-塑性変形の順に特性が変化する。しかし、侵入型原子を添加したチタン基形状記憶合金では試験温度の上昇に伴って、超弾性-形状記憶-超弾性-塑性変形と変化し、通常の形状記憶合金とは全く異なる試験温度依存性を示す。本研究では、このような異常な挙動の原因として、侵入型原子に起因したナノメートルサイズのドメイン構造(ナノドメイン)に着目した。このナノドメインは合金内部に均一に分散しており、通常のマルテンサイト変態を阻害している。本年度は、ナノドメインによって室温での応力誘起マルテンサイト変態中の結晶構造変化がどのように起こるかをX線回折(XRD)により測定した。そのために、まず引張応力を加えながらその場でXRD測定を行える治具(本年度は室温のみ)を自作した。この治具を用いて測定した結果、室温では通常とは異なるメカニズムで応力誘起マルテンサイト変態が起こっていることが判明した。これはマルテンサイト変態メカニズムの試験温度依存性を解明する上で基準となるデータであり、非常に重要である。また、これに加えて本年度は応力を負荷していない状態での透過型電子顕微鏡(TEM)観察を様々な温度で行った。その結果、ナノドメインは温度に依存してその安定性が変化しており、これが形状記憶特性の異常な試験温度依存性に大きな影響を及ぼしていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに当初の予定通り、室温で引張変形を行いながらその場でXRD測定を行うことのできる治具の作製及び室温での測定まで完了した。室温でのその場XRD測定では予想通りの結果が得られており、おおむね順調である。また、TEM内での加熱/冷却その場観察も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、室温にて試料を引張変形させながらその場でXRD測定を行うところまで進展した。今後はこの装置にヒーター及びペルチェ素子を追加し、加熱・冷却を行いながら引張その場XRD測定を行う。これにより、ナノドメイン構造とマルテンサイト変態の関係を明らかにする。また、引張その場TEM観察も行うことで、引張変形中の試料内部における微視的な組織変化も解明する。
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Research Products
(10 results)