2011 Fiscal Year Annual Research Report
地下環境を利用した破壊修復による岩質材料の力学特性向上の促進・制御に関する研究
Project/Area Number |
23860027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奈良 禎太 京都大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00466442)
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Keywords | 地下環境 / 破壊修復 / 温度 / 湿度 / 水 / 岩石 / セメント系材料 |
Research Abstract |
地下岩盤に形成される構造物には長期安定性の確保が必要である。また最近では,大地震や大津波により,地表での生活や産業などに大きな打撃が与えられたことが問題となっている。このような背景により,安定した環境が期待できる地下環境の有効利用が,今後の人類の生活や社会の産業の発展に不可欠であると考えられる。ゆえに,地下環境で得られる現象の調査や,それを利用して安定した環境の形成につなぐことのできる研究は極めて重要と考えられる。本研究では,地下のような,圧力下で化学反応が生じる場合に起こる岩質材料(岩石やセメント系材料)の破壊修復を活用して,構造物の長期安定性の確保に繋がる研究を行う。平成23年度は,主に実験的研究を行った。初めに,あらゆる履歴を加える前の材料の力学試験(弾性波速度測定と透水試験)を行う。続いて,圧力下で周辺環境(温度・湿度・水質)を制御した条件下で力学試験を行い,破壊の修復を調べる。弾性波速度測定より,大気中において,周辺環境の湿度が上昇する際に,速度が低下するという結果が得られた。これは,湿度上昇に伴う岩石内粒子間の接触力の低下を示すものであり,低湿度下において岩石の安定性が増すということが結論付けられる。また,花崗岩を用いた透水試験より,圧力の上昇とともに透水性が低下することや,き裂が多く分布する方向において透水性が高くなることが示された。また,水中に保存したセメント系材料において,カルシウム化合物の析出によりき裂が修復することが確認された。すなわち,破壊が修復し,水の流れが断たれて透水性が低下することによって,遮蔽性が向上する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、岩石の破壊修復に及ぼす周辺環境の影響を調べる予定であったが、セメント系材料の破壊修復に関する知見も得られ、計画以上に研究がすすめられたと考えている。さらに、弾性波速度測定より、破壊修復のみならず、岩石の劣化に関する情報も得ることができ、当初の計画で予期していなかった結果も得ることができでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
X線CTによる内部の非破壊観察や顕微鏡観察によって,破壊の修復を視覚的に調べる。X線CTは材料内部の破壊の修復を非破壊で調べることができるため、本研究で極めて有用であると考えている。また、顕微鏡観察では、ミクロな視点から材料内部を調べることができるため、破壊修復の微視的組織の影響を調べ、影響因子を特定するのに不可欠である。さらに、弾性波速度測定も引き続き行い、岩石の破壊修復に関して実験的に調べる。このほか、理論計算を行い、岩質材料内の破壊やその修復が力学特性に及ぼす影響について情報を得る。
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Research Products
(9 results)