2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体用Ti-Nb基合金で発見された疲労軟化とω相の単一バリアント形成の機構解明
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23860030
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
當代 光陽 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (10610800)
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Keywords | 生体材料 / チタン合金 / ω相変態 / 疲労試験 |
Research Abstract |
本研究はβ型Ti合金において、近年我々のグループが見出した疲労軟化現象と、それと同時に異常析出する転位誘起ω相の単一バリアントの発生起源ならびに選択機構についてTi-xNb(at.%)二元系合金を用いて解明することを目的とした。23年度ではまず、アーク溶解ならびに浮遊帯溶融法を用いてTi.xNb合金の良質な単結晶体を得ることに成功した。また、電気抵抗測定ならびに透過型電子顕微鏡観察によりこれらの単結晶体における溶体化処理状態での相変態挙動ならびに微細組織を明確にした。さらに圧縮試験をすづり変形が容易に生じると考えられる〈149〉方位から圧縮試験ならびに二面トレース解析を行うことで疲労軟化現象が出現するであろう組成域においては{110}〈111〉すべり系が支配的であることを明らかにした。これらを踏まえて、ひとつの組成の単結晶体より背面ラウエ法ならびに放電加工機を用いて荷重軸が〈149〉方位となるような試験片を作製し疲労試験を行った。その結果、疲労軟化現象が生じる前に破断に至った。この結果は転位運動によりω相が出現する前に応力誘起マルテンサイト相が出現したためと考えられる。これらの結果より疲労軟化現象を引き起こすためには転位誘起ω相の出現が応力誘起マルテンサイト相の出現よりもより容易に起こる組成域が必要であることが理解できた。24年度では、溶体化処理状態の変態挙動を踏まえ、疲労軟化現象出現の有無のNb濃度依存性、出現したω相の析出形態、このω相が塑性変形に及ぼす影響を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における試料は作成に特殊な技術を必要とするβ型Ti合金単結晶である。平成23年度において、本研究に必要な単結晶育成に成功し、さらに基礎的な物性ならびに圧縮試験による変形挙動も明らかとなった。これらの結果から、本研究の申請時に予定していた初年度における研究目的はおおむね順調に達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は昨年度に育成した単結晶試料から方位の決定ならびに試料の切り出しを行い、その後疲労試験を行う予定である。単結晶体を用いた疲労試験には測定装置の習熟が不可欠であるが、すでに行った予備実験により試験可能な状況となっている。疲労試験後は透過型電芋顕微鏡観察ならびに特定の方位における圧縮試験を行う予定である。これらの観察およが測定において使用する実験装置は現有設備であり、その使用に関しても問題ない。これらの結果を国際ジャーナルならびに国内外の学会において発表し、本研究を国内外に発信する予定である。
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