2011 Fiscal Year Annual Research Report
相変態およびひずみの効果に着目した鉄系超伝導線材作製
Project/Area Number |
23860042
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
水口 佳一 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (50609865)
|
Keywords | 鉄系超伝導 / 超伝導線材 / 鉄カルコゲナイド |
Research Abstract |
本研究は2008年に発見された新しい高温超伝導体である鉄系超伝導体を用い,高性能な超伝導線材を作成する手法を開発することを目的としている.鉄系超伝導体は上部臨界磁場が非常に高く,強磁場下での超伝導応用に期待が寄せられている.本研究で対象とする鉄カルコゲナイド系(FeSe系,FeTe系)は,鉄系超伝導体の中で最も単純な結晶構造と組成を持ち,さらに超伝導異方性が非常に低いことから,応用の有力な候補である.本研究は,構造相変態およびひずみの効果に着目した鉄カルコゲナイド系線材化手法の開発を目的とする.鉄系超伝導体の中で毒性の低い鉄カルコゲナイド系超伝導線材を簡便なプロセスで作成でき,さらにその特性が実用化レベルに達すれば,強磁場下での超伝導線材応用を担う材料となることが期待できる. 平成23年度の研究成果として,構造相変態を駆使したFeSe超伝導線材の高密度コア化を実現する新手法を開発した.FeSe超伝導線材の従来の作製法(Fe拡散法)では完成した線材のコアに空洞ができる現象が観測されていた.この問題点を解決するために,線材焼成過程でコアが膨張する化学変化に着目した手法を開発した.線材焼成前にFeシース内に密度が高くFeに対してSeが過剰な組成の六方晶FeSe1+xを充てんする.熱処理により六方晶FeSe1+xとシースのFeが化学反応を起こし,体積膨張を伴う超伝導コア(正方晶相のFeSe)を実現する.実際に得られたFeSe線材は高密度コアを持ち,さらに熱処理温度の最適化からJc>600A/cm2の臨界電流密度を観測した.この値は実用化レベルにはまだ及ばないが,FeSe系線材として二番目に高い値である.今後の作成手法最適化,ピンニングセンター導入など改良点を加えていくことでJc>100000A/cm2の実現を目指す.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テーマとして設定した"相変態"を取り入れた新規鉄系超伝導線材作製手法を平成23年度に開発でき,平成24年度の研究でさらなる特性向上を期待できるため.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に開発した"構造相変態PIT法"を用いてFeSe系超伝導線材の高性能化を目指す.具体的には現在用いている鉄シースの代わりに銀シースなどを用いた展開や,多芯化,ピンニングセンターの導入などを検討し,本手法に最適な線材化条件を見出す.また,これまでに導入していなかった評価法として,線材コアの密度(硬さ)を測定し,線材化プロセスの最適化を目指す.
|
Research Products
(13 results)