2011 Fiscal Year Annual Research Report
炭素のナノコーティングとMgの展性によるMgB2超伝導線の臨界電流密度改善
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23860050
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
前田 穂 日本大学, 理工学部, 助手 (80610584)
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Keywords | 二硼化マグネシウム / 臨界電流密度 / 超伝導線 / 炭素 / ピレンガス / 格子欠陥 |
Research Abstract |
MgB_2材料、特に、リンゴ酸(C_4H_6O_05)などの炭素化合物を添加した線材は、超伝導応用の重要な指標となる臨界電流密度(Jc)が高い値を示すため、次世代のMRI装置等への応用に期待が持たれている。しかし、現在、その線材の作製には、高価な非晶質の瑚素粉末が必要不可欠であり、製造コスト低減への一つの課題となっている。そこで、本研究では、安価で製造できる結晶質の瑚素を、ピレン(C_<16>H_<10<)ガス中で熱処理した粉末と、粗大なマグネシウム粉末を使用することにより、Jcの増大を試みた。 まず、前段階として、ピレンガス処理を行わずに、従来の方法から、ピレンの固体粉末と非晶質の瑚素粉末を原材料として、MgB_2線材を作製し、その炭素化合物の添加効果を調べた。リートベルト解析と第一原理計算から、格子定数aは収縮し、格子定数cはわずかに伸長することがわかった。この格子変化は、MgB_2の瑚素格子上に空孔を形成させ、非常に大きな格子歪みを引き起こすことが明確になった。この構造変化は、不可逆磁場を改善し、磁場下のゐを増大させた。よって、ピレンは、MgB_2の超伝導特性改善に有効な添加材料であることがわかった。 次に、ピレンをガス化させ、そのガス中で熱処理した結晶質の棚素粉末と粗大なMg粉末から、MgB_2線材を作製した。その磁場下のJcは、前処理しない線材に比べて著しく増大し、さらに、非晶質の瑚素粉末から作製した線材とほぼ同等であることがわかった。これは、ピレンガスが棚素粉末へ均質に分散し、また、Mgが通電電流方向へ伸長したためである。棚素粉末に対して、ピレンガスの量を0.5,1.0,2.0 wt%と増やすことにより、磁場下のJcが増減した。これは、棚素の炭素コーティング膜厚が、変化したためであると考えられる。以上より、結晶質の棚素粉末からでも十分高いJcをもつ線材を作製できることが明確になった。
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Research Products
(1 results)