2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しい再生医療の実現に向けた自己組織化誘起型生体内バイオプロセスのシステム化
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23860078
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
岩井 良輔 独立行政法人国立循環器病研究センター, 生体医工学部, 流動研究員 (60611481)
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Keywords | 移植・再生医療 / 生体内組織工学 / バイオチューブ / バイオリアクター / 脂肪由来間質細胞 / バイオプロセス |
Research Abstract |
無毒・非分解性の基材を皮下に埋入すると基材はコラーゲンと繊維芽細胞を主成分とする組織でカプセル化される。 我々はこの現象を利用し生体内をバイオリアクターとして血管様組織体(バイオチューブ)を開発しているが、得られたバイオチューブは移植に十分な機械的強度を有する一方で、壁厚が薄く操作性に優れない、また、内皮細胞層が存在しないため血栓形成の恐れがあるという問題点があった。そこで本研究では、脂肪組織に含まれる間質血管構成細胞群(ADSC)に着目し細胞工学的アプローチにより、バイオチューブの(1)移植時、または(2)作製段階においてADSCを導入することでバイオチューブの早期の生体血管への成熟化を目指した。 (1)バイオチューブ移植時におけるADSC導入の検討 主材捧の外側面に複数本の副材棒を配した鋳型基材を作製し、これをビーグル犬皮下に4週間埋入することで外側面にトンネル状の空洞構造を有するバイオチューブを得た。次に、このバイオチューブの総頸動脈への移植と空洞内へのADSC懸濁液の注入実験を行った結果、注入したADSCの大部分は空洞内にはほとんど生着せず、吻合部から流出することが分かった。そこで現在、ADSCが高効率にバイオチューブに生着できるADSCの導入法を検討している。 (2)バイオチューブ作製段階におけるADSC導入の検討 ラット皮下脂肪から分離したADSCと組み合わせた基材をラット皮下組織内に2週間埋入した。その結果、従来の4倍以上の壁厚に加え内腔面に内皮細胞層を、中間層付近に平滑筋細胞を有する極めて生体血管に近似したバイオチューブが得られた。全て自己組織からなり、内皮層に加え平滑筋も有する人工血管はこれまでに報告されておらず、本バイオチューブは移植直後から生体血管と同等の機能を有する理想的な人工血管となり得ると期待される。現在移植実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオチューブの移植時における細胞導入実験においては、より高効率にバイオチューブに生着可能な細胞の導入方法を検討する必要がありこの点でやや遅れがみられるが、既に解決法を見出している。一方、バイオチューブ作製段階における細胞導入実験においては、当初の実験計画通り生体血管に近似したバイオチューブが既に得られており、移植実験も実施中である。以上より、バイオチューブの生体血管近似化プロセスの確立に向け研究はおおむね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオチューブの移植時における細胞導入実験においては、より生着率の高い細胞導入法を検討する必要がある。我々は既に、ADSCの3次元凝集体の作製法を開発し、この凝集体がバイオチューブと高接着性であることを確認している。従って今後は、ADSCを凝集体の形でバイオチューブに導入する方向で研究を推進しバイオチューブの生体血管への早期近似化を目指す。一方で、バイオチューブの作製段階における細胞導入実験は計画通りに進展しており、今後の移植実験において有用性確認していく予定である。
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Research Products
(2 results)