2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化機構の発現に及ぼす制限要因の特定:社会性昆虫を例に
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23870003
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
菊地 友則 千葉大学, 海洋バイオシステム研究センター, 准教授 (80608547)
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Keywords | 自己組織化 / 社会性昆虫 / 女王物質 |
Research Abstract |
本研究では社会性昆虫を用いて、システムとしては存在する自己組織化機構が何故機能しないのかという問いに、下位構成要素の行動発現に及ぼす制限要因から適応的な答えを導き出すことを目的とした。非平衡-開放系の動的秩序の一つである自己組織化の概念は、熱力学則によって規定される化学過程に由来する為、システムの最適性・安定性を前提にした理論、実証研究が行われてきた。.しかしながら、熱力学則に加え自然選択も働く生物の自己組織化機構では、様々な選択圧が働くためシステムの最適性、安定性が常に担保されるとは限らない。本研究課題ではトゲオオハリアリを用いて、コロニーサイズ依存的な自己組織化発現パターンの適応的意義について、下位要素の行動発現に関わる選択圧から検討する。さらに、種問比較から、自己組織化機構によるワーカー産卵制御方法の適応進化について考察ことを目的とした。23年度は、女王物質の情報伝達に関わるコストの推定と、種間比較対象種のサンプリング、生態調査を行った。本種では女王物質の伝達が、女王によるパトロール行動(巣内俳徊)に大きく依存し、パトロール行動が卵巣発達ワーカーの存在によって促進されることが先行研究から明らかになっている。そこで、人為的にコロニー内の卵巣発達ワーカー比率を変えて、女王のパトロール時間、頻度の増減と産卵数の関係を調査した。その結果、女王のパトロール時間、頻度の増加とともに、産卵数が減少することが示された。このことは、情報伝達自体にコストが伴い、これが自己組織化機構の発現を制限している可能性示唆された。また、自己組織化機構の機能を考察するためには、類似の情報伝達システムを持つと予測されるツシマハリアリの生態調査を行った。長崎県対馬市で調査を行った結果、コロニーは森林内の石下に分布しており、コロニーサイズは50~150とトゲオオハリアリと近い値を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査自体に大幅なお遅れはみられず、順調に進展にしていると考えている。ただ、種間比較対象種のサンプリングが不十分な点があり、これが若干の不安材料となっているが、24年度に早期に調査を開始することによって充分補えるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
自己組織化機構の適応進化を考察する際、種間比較により各生態要因との関連性を検討する必要がある。社会性昆虫では自己組織化機構は複数報告されているものの、同形質を複数種にまたがり調査、比較した研究はほとんどない。そのため、特定種のシステムとしての記載にとどまり、システムの機能にまで言及した研究が少ない、今後は、さらに詳細な種間比較を行い、生物の自己組織化機構の一般性について明らかにしていきたい。
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Research Products
(2 results)