2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン脱メチル化酵素Fbxl10は如何にして生殖細胞の発生を調整するのか?
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23870007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小沢 学 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (80608787)
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Keywords | 精巣 / 精子 / 減数分裂 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
本研究では、ピストン脱メチル化酵素であるFbxl10/Kdm2b(以下Fbxl10)の精子および卵子形成における機能を詳細に解析している。平成23年度は以下に示す3点について研究を行った。 1)精巣におけるFbxl10の発現動態の解析 精巣におけるFbxl10の生理的な発現動態の詳細はこれまで明らかではなかった。そこで、新生児から性成熟に至る各時期の精巣を経時的に回収し、Fbxl10のRNA量の変動を解析した。その結果、出生直後ではFbxllOの発現は殆どみられず、減数分裂の開始と同時に発現量が著しく上昇し、性成熟に達する時期にプラトーに達してその後は高い状態で推移することを明らかにした。 2)精細管における精細胞の分布と減数分裂の進行の観察 精細胞の各分化段階のマーカーを用いて、精巣内における精細胞の分布と減数分裂の進行を免疫組織学的に観察した。その結果、加齢に伴い減数分裂を完了する性細胞が激減するとともに、未熟な精原細胞の数も少なくなることを明らかにした。また、一見正常に見える弱齢の精細感においても、各文化段階の精子の分布に異常が見られることを観察した。 3)Fbxl10を欠損した精子から作出した配偶子の発生能の検証 正常な胚発生には精子および卵子特異的なDNAのメチル化(インプリンティング)が必須であり、異常なインプリンティングを受けた配偶子から次世代は作出されない。近年このインプリンティングがヒストンのメチル化状態の変動を介してマーキングされることが示唆されている。そこで、Fbxl10欠損オスマウスから精子を回収し、体外受精、体外胚培養および胚移植実験に供すことで精子の次世代形成能を検証した。その結果、新生仔の出生率が対照区と比較して半分以下に低下すること、特定の時期で胎仔の死滅が起こるのではなく、妊娠期間を通じて堕胎が起こっていること、更に、生まれてきた子供には特に以上が見られないことを観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精子・精巣の解析に関しては平成23年に計画しているほぼすべての計画を終え、平成24年度に計画をしていた一部の研究に関しても既に解析を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
精子・精巣を用いた研究は、これまで通り逐次進行する。一方で、まとまった数を確保するのが精子よりも困難である卵子の研究に関しては、平成23年度は主にサンプリングを進めることに費やした。平成24年度の早い段階で卵子の解析にも着手し、年度内で全ての計画を完了させる予定である。
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