2012 Fiscal Year Annual Research Report
海洋・湖沼環境におけるクロロフィル色素の代謝プロセスの解明
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23870028
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
柏山 祐一郎 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (00611782)
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Project Period (FY) |
2011-08-24 – 2013-03-31
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Keywords | クロロフィル / 水圏環境 / プロティスト / 微細藻類 / 光毒性 / シクロエノール / シクロフェオフォルバイドエノール |
Research Abstract |
1. クロロフィル誘導体「シクロエノール」はプロティストによるクロロフィルの「解毒」代謝物であることを解明した。まず,微細藻類を捕食する多くのプロティストが,食作用とよばれる消化・分解の仕組みの過程で,クロロフィルaをシクロフェオフォルバイドaエノール(以下では「シクロエノール」と略する)という化合物に変化させることを発見した。本研究では,このシクロエノールが,プロティストによるクロロフィルの解毒代謝産物であると結論づけた。すなわち,シクロエノールの合成標準試料の研究から,この化合物は可視光を吸収する緑色のクロリン色素であるにもかかわらず,無蛍光性で光毒性を有しない(一重項酸素を発生させない),微生物にとって安全な色素であることが分かった。 2. 次に「シクロエノール代謝機構」をもつプロティストの多様性の解明に取り組み,遺伝的に異なる様々なプロティストの間で共有されていることを示した。すなわち,スSAR群とCCTH群,およびエクスカバータ群に属するプロティストが,この代謝をおこなうことが分かった。これらのグループだけで海洋中のプロティストのうちの約70%を占めるとされており,今回の結果は,シクロエノールが海洋や湖沼の様々な試料中に多量に検出される事実とよく合致する。すなわち,プロティストたちにとって,光毒性のクロロフィルを大量に含有している植物プランクトンを捕食するという生き方を進化させ,水圏環境で成功を収めるには,クロロフィルの解毒戦略という生理学的な適応戦略を進化させる必然性があったことを示唆する。 3. シクロエノールは環境中から普遍的に検出され,シクロエノール代謝を備えたプロティストによる植物食が,海洋や湖沼の食物網において重大な寄与を持つことが示された。特に,ピコ藻類が食物網に組み込まれる過程として,このプロティストによる捕食活動は非常に重要である可能性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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