2011 Fiscal Year Annual Research Report
植食性昆虫の寄主転換は寄生蜂の多様化に寄与するか:連続的種分化の検証
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23870037
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
大島 一正 京都府立大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教 (50466455)
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Keywords | 昆虫 / リーフマイナー / 寄生蜂 / 種分化 / 産卵選好性 |
Research Abstract |
クルミホソガの両ホストレースが同所的に分布する地点(岡山)と,クルミレースのみが分布する地点(山形),ネジキレースのみが分布する地点(京都)のそれぞれからマインを採集し,クルミホソガの寄生蜂であるAneurobracon philippinensis(膜翅目:コマユバチ科)を得た.これらのサンプルからゲノムDNAを抽出しミトコンドリアCOI遺伝子とND5遺伝子の部分配列を用いて系統解析を行ったところ,クルミレースを寄主とするA. philippinensisとネジキレースを寄主とするA. philippinensisの間には,明瞭には区別されなかった.クルミホソガの両ホストレース間にはミトコンドリア遺伝子に明瞭な遺伝的に分化が見られるが,A. philippinensisにはこのような遺伝的分化が見られなかったことから,クルミレースとネジキレースのそれぞれに寄生しているA. philippinensisは,遺伝的に均一な集団であるか,ごく最近に分化したため,十分に遺伝的分化が生じていない集団どうしである可能性が示唆された.そこで,より鋭敏に両ホストレース由来のA. philippinensis間の遺伝的分化を調べるため,Amplified Fragment Length Polymorphism(AFLP)マーカーによる解析を試み,現在データの解析を行っているところである.次に,寄生蜂A. philippinensisの産卵選好性を調べるため,クルミホソガの幼虫がどのような齢期のときに寄生を行うかを観察した.その結果,全5齢のクルミホソガ齢期のうち,1から3齢の間では寄生自体は可能であることが明らかとなった.ただし,1-2齢と3齢期で,クルミホソガ幼虫が形成するマインの形状が異なるため,産卵効率は1-2齢時の方が高いことが示された.よって,クルミレースおよびネジキレースの1-2齢期のマインが形成された寄主植物葉を用意することで,寄生蜂A. philippinensisの産卵選好性を定量化する手法が確立された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の科研費の交付直後に研究代表者の異動(基礎生物学研究所・研究員から京都府立大学・助教)があり,研究環境の整備に時間がかかったため.
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝解析については,サンプル数と地点数を増やし,データを増強して日本産個体群の遺伝構造がつかめるようにする.寄生蜂の産卵選好性に関しては,未交尾のメス個体を用いた実験系は確立できているが,雄と交配させてから産卵選好性実験を行う実験系に改良する.
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