2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23880002
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
宮崎 雅雄 岩手大学, 農学部, 特任准教授 (20392144)
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Keywords | ネコ / 嗅覚コミュニケーション / 本能行動 / GC-スニッフィング |
Research Abstract |
ネコは、伴侶動物として我々にとても身近な動物だが、ネコの行動を科学的に検証している事例は少なく、多くの行動原理が未だ解明されていない。その一つが尿マーキングによる縄張り行動である。ネコの縄張り行動は広く知られているが、情報媒体となっているにおい物質の分子種、その処理に関わる嗅覚神経回路、他個体の嗅覚情報から得る利益など殆ど分かっていない。ネコの嗅覚コミュニケーションの仕組みが明らかになれば、多様な哺乳動物の嗅覚システムの基本原理を解明するためにも活用できると期待される。そこで本研究では、ネコのフレーメンと呼ばれる本能行動をモデルに、ネコの嗅覚コミュニケーションに関わるにおい物質の同定と情報処理に関わる嗅覚神経回路の解明を目指している。今年度は、6頭のネコの尿を混合した試料を準備して、そこからフレーメンを誘起するにおい物質の同定を試みた。ネコ尿をバイアルにいれ、40℃で加温しながら揮発成分をTenax-TAに濃縮した後、加熱脱却GC-スニッフィング装置で濃縮した揮発成分をにおい袋に回収した。におい袋をネコに提示したところ、ネコが丹念ににおいを嗅いだ後フレーメンすることが分かった。よって非自己の嗅覚情報は揮発性のにおい物質で作られ、それがブレーメンの誘起に関係していることを明らかにできた。次に鋤鼻器の開口部である切歯管(口腔前歯後方に位置する穴)を医療用ボンドで塞いだのち、尿を提示指定フレーメンの有無を調べた。結果、切歯管を塞いだネコもフレーメンをしたため、切歯管からの物質取り込みは、フレーメンに必要ない可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネコの尿には数百、数千種類にもおよぶ有機化合物が存在していると考えられるが、今年度の成果よりフレーメン誘起フェロモンが揮発性物質であることが分かり、候補物質がだいぶ絞られたと考える。また切歯管を塞ぐ動物実験も順調に実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、GCで揮発性におい物質を分取しながらフレーメンの誘起に必須なにおい物質の同定を試みる。また引き続き詳細に行動解析を実施してフレーメンの有無でネコの他の行動や生理状態が変化するか調べる。
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Research Products
(1 results)