2011 Fiscal Year Annual Research Report
鶏の暑熱適応における脱共役タンパク質の生理的役割および発現制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
23880003
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
喜久里 基 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (90613042)
|
Keywords | 暑熱ストレス / 脱共役タンパク質 / 活性酸素種 / ミトコンドリア / 肉用鶏 / 産卵鶏 / プロトンリーク / 膜電位 |
Research Abstract |
暑熱ストレスによって肉用鶏の増体量や肉質が低下するが、これには骨格筋ミトコンドリアにおける活性酸素種(ROS)の過剰産生によって誘導された酸化ストレスが大きく関与している。暑熱時のROS過剰産生は脱共役タンパク質(UCP)の発現量が低下し、プロトンリーク能が低下した結果生じた膜電位上昇によることが明らかになっているが、他方でUCP発現量が潜在的に高い産卵鶏ではROS産生量はほとんど変化せず酸化ストレスも肉用鶏ほど大きく増加しないことが報告されている。したがって、UCP発現は暑熱時のROS過剰産生において重要な役割を担っていると考えられる。そこで本研究では、UCP発現量が潜在的に異なる肉用鶏および産卵鶏を用い、暑熱による影響を考慮し同体重(体重約1.2kg)の両鶏を急性暑熱曝露(34℃、12h)した後、骨格筋ミトコンドリアROS産生およびUCP介在性プロトンリーク能を調べた。暑熱曝露によって肉用鶏、産卵鶏ともに体重は減少したが、その減少度は肉用鶏に比べ産卵鶏で明らかに小さかった。また、体温は肉用鶏では暑熱によって約2.5℃上昇したが産卵鶏ではほとんど変わらなかった。UCP介在性プロトンリークは、肉用鶏では通常環境時(24℃)に比べ暑熱時で明らかに低くなったが、産卵鶏では通常時ならびに暑熱時においてほとんど差異が認められなかったことから、UCP発現は肉用鶏では暑熱時に大きく低下している一方で産卵鶏では維持されていることが示唆された。さらに、ミトコンドリアROS産生量は肉用鶏では暑熱によって約2倍に増加したが産卵鶏ではほとんど変化しなかった。また、酸化ストレス(過酸化脂質含量)は肉用鶏では有意に増加したのに対し、産卵鶏ではわずかな増加にとどまった。以上の結果より、UCP発現は急性暑熱曝露にともなう鶏骨格筋ミトコンドリアのROS過剰産生における主要因子であることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、急性暑熱時の鶏骨格筋ROS過剰産生におけるUCP発現の役割について評価し全て予想通りの成果を得ることができた。また、UCP発現量の大小にほとんど左右されないNADH誘導性ROS産生応答も評価した結果、肉用鶏、産卵鶏ともに暑熱曝露時でもこのROS産生量は変化しないことを明らかにした。このことからも、UCP発現は肉用鶏における暑熱時のミトコンドリアROS過剰産生の主要因子であることが裏打ちされる。この点も含め、上記の自己評価にいたった。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も当初の計画通り、機能性資材給与によるUCP発現誘導肉用鶏は急性暑熱にともなうミトコンドリアROS過剰産生を抑制できるか否か、ならびに暑熱ストレス時における産卵鶏のUCP発現維持の分子メカニズムを明らかにし、暑熱適応の新たな制御分子を追究する。
|