2011 Fiscal Year Annual Research Report
ストリゴラクトン生合成阻害剤を用いたストリゴラクトン生合成経路の解明
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23880006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 晋作 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任助教 (70608950)
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Keywords | ストリゴラクトン / 生合成阻害剤 |
Research Abstract |
本年度は、TIS108がストリゴラクトン生合成経路解明の為に有用なツールであるかを検討するため、様々な植物体におけるストリゴラクトン内生量のLC-MS/MSによる定量法の確立を行うとともに、これまでに創製したストリゴラクトン生合成阻害剤TIS108の効果をイネ以外の植物に対して検討した。イネ、ソルガム、ミヤコグサ培養根、シロイヌナズナについてストリゴラクトン内生量の定量を試みたところ、イネ、ソルガム、ミヤコグサ培養根においてストリゴラクトンの検出が可能となった。これらの植物体に対するTIS108の効果を検討したところ、どの植物体もTIS108を処理することでストリゴラクトン内生量がTIS108濃度依存的に減少していた。しかし、ミヤコグサ培養根に対しては内生ストリゴラクトン量が他の植物に比べて多量であったため、高濃度のTIS108を処理する必要があった。シロイヌナズナにおいて、内生ストリゴラクトンは検出できなかったものの、枝分かれ数を指標としたバイオアッセイ系でTIS108の効果を検討したところ、TIS108を処理することで枝分かれ数の増加が観察され、合成ストリゴラクトンと共処理することにより枝分かれ数が減少した。また、TIS108を処理したシロイヌナズナにおけるストリゴラクトン生合成酵素遺伝子の遺伝子発現量を定量PCRで確認したところ、TIS108処理によりストリゴラクトン生合成酵素遺伝子であるMAX3及びMAX4の遺伝子発現量が増加していた。これらの遺伝子はストリゴラクトン処理によって発現量が減少することが知られており、TIS108を処理することによりストリゴラクトン内生量が減少し、発現量が増加したと考えられる。以上の結果より、TIS108はシロイヌナズナにおいてもストリゴラクトン生合成阻害剤として効果を有しており、単子葉類、双子葉類の区別なく効果を有するストリゴラクトン生合成阻害剤であることが明らかとなった。今後は、TIS108の標的を検討するとともに、LC-MS/MSを用いて、TIS108処理によって増加する低分子化合物の探索を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はTIS108が様々な植物に効果を有することを明らかにすることができた。この結果は、TISIO8の標的タンパク質が植物間で保存されており、TIS108がストリゴラクトン生合成研究に有用であることを示すものである。来年度以降TIS108を用いてストリゴラクトン生合成を解明できる可能性があり、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、TIS108の標的タンパク質の同定を行う。現在、TIS108標的タンパク質の有力候補であるP450の過剰発現体を作製しており、この植物に対するTIS108の効果を検討する。同時に、ストリゴラクトンが検出しやすいミヤコグサ培養根においてTIS108処理によって変化する低分子化合物をLC-MS/MSを用いて同定することを試みる。しかし、ミヤコグサに対しTIS108は効果が低いため、有望な低分子化合物を同定することが困難な場合も考えられる。この場合、ミヤコグサに対してより活性の高いストリゴラクトン生合成阻害剤の探索を行っていく。
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Research Products
(4 results)