2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23880014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉永 直子 京都大学, 農学研究科, 助教 (40456819)
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Keywords | 鱗翅目幼虫 / FACs / 窒素代謝 / アミノ酸 / 腸管 |
Research Abstract |
本研究では鱗翅目幼虫の加速度的生育を支える窒素代謝に注目し、その制御メカニズムを解明することを目的として昆虫腸内FACs(fatty acid amino acid conjugates)の生合成代謝を明らかにした。 まず、これまでに確認できなかった鱗翅目幼虫のグルタミン酸型FACsのin vitro生合成に初めて成功した点は大きい。これにより、既に生合成経路がわかっているコオロギと比較することができた。その結果、グルタミン型FACs末端の加水分解によってグルタミン酸型FACsを作るコオロギと異なり、鱗翅目幼虫では直接グルタミン酸をFACsに組み込むことが明らかとなった。グルタミンとグルタミン酸の2種のアミノ酸のみからFACsを作る点、及びこれらFACsが腸管特異的であるという点で鱗翅目幼虫とコオロギのFACsは極めて似ているが、進化的には無関係である可能性が示唆された。 このことを検証するためにもFACs生合成酵素の同定が重要であり、本科研費1年目の目標であった。別記する理由によりまだ酵素の同定には至っていないが、手法は全て確立できた。まず、本科研費により購入したインキュベーターを活用して大型鱗翅目幼虫であるカイコを大量飼育するシステムを構築した。ミクロソーム画分をタンパク精製用HPLCにて精製し、二次元電気泳動で30kDa及び40kDaのスポットに絞り込んだ。MSMSイオンサーチ解析により得られたペプチド断片のアミノ酸配列をMascot検索したところ、一番濃度の高い30kDa付近のスポットがカイコのtrypsin-like protease precursorと一致すると示された。しかしながら、CBB染色からサンプル量は解析に十分であったにもかかわらず、sequence coverageが3%と低かったことから、このタンパク質がデータベース上にない未知タンパクである可能性が強く示唆された。また、40kDa付近のスポットは数種のタンパク質との相同性が示されたが、いずれもFACsのアミド結合生成に関わっているとは考えにくいことから夾雑物と考える。引き続き、プロテインシーケンサーを使ったN末端からのアミノ酸配列の同定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カイコは幼虫の体サイズが大きいことに加えて、ゲノムが解読されたモデル生物であることから、酵素精製の素材として適切であると考えたが、本酵素が未同定タンパク質である場合にはMSMSイオンサーチでは十分な情報を得られないことがわかった。したがって、本課題の中核となるFACs生合成酵素には難航しているが、in vitro系でグルタミン酸型FACsの生合成に成功したことは当初の予定より大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していたMSMSイオンサーチでの酵素同定を諦め、プロテインシーケンサーによるN末端の解読によってペプチド断片の同定を行う。既に膜転写の手法も確立してあり、プロテインシーケンサーを学内他研究室から借りることで承諾を得ている。
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Research Products
(10 results)