2011 Fiscal Year Annual Research Report
天然由来オートファジー制御化合物の探索及び作用機構の解明
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23880015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮前 友策 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (30610240)
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Keywords | オートファジー / 肝星細胞 / 脂肪滴蓄積 / テトランドリン / Thymelaea hirsuta / PPARγ / daphnolon |
Research Abstract |
脂質代謝はメタボリックシンドロームの治療面から注目されてきたが、最近Nature誌に脂質代謝とオートファジーの関連が報告され、オートファジーによる制御が俄に注目を集めている。本研究では、北アフリカ産植物Thymelaea hirsutaの抽出物が肝星細胞株で脂肪滴蓄積促進活性を示したこと、活性発現にはオートファジー制御の関与が考えられることに着目して、活性物質を単離・同定し、標的分子及び作用メカニズムを明らかにすることを目的とした。本年度はT.hirsutaからオートファジー制御活性を有する化合物の単離を試みた。しかし、詳細に検討したところ、T.hirsutaの抽出物及び分離画分を処理した肝星細胞内においてオートファゴソームのマーカーであるLC3タンパク質量に変動は見られなかった。先行実験で用いた植物体と採取時期などのロットの違いから、活性を示すと考えられる化合物の含有量が少ないため活性が見られなかったものと考えられる。一方、T.hirsutaの抽出物及び分離画分に、肝星細胞の静止期への移行に関わるPPARγのアゴニスト活性が認められたため、PPARγアゴニスト活性を指標に活性物質の探索を行ったところ、活性物質としてdaphnolonが単離された。DaphnolonがPPARγアゴニスト活性を有することはこれまでに報告されていない。 当初着目したT.hirsutaの抽出物及び分離画分にオートファジー制御活性が認められなかったため、天然物を含む種々の化合物を用いてスクリーニングを行った。その結果イソキノリンアルカロイドであるテトランドリンを処理した肝星細胞株HSC-T6細胞、及びLX-2細胞において、脂肪滴が顕著に増加すること、及びLC3-IIタンパク質量が顕著に増加することを新たに見出した。平成24年度ではテトランドリンの構造活性相関の検討、及び標的分子の同定を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではオートファジーと脂質代謝を同時に制御する天然由来化合物を探索し、その作用機構を明らかにすることを目的とするものである。当初研究材料として着目した北アフリカ植物Thymelaea hirsutaの抽出物には活性が認められなかったが、代替の研究材料を探索するためスクリーニングを行った結果、イソキノリンアルカロイドであるテトランドリンに活性を有することを新たに見出した。また、T.hirsutaの抽出物にオートファジー制御活性は見られなかったが、PPARγのアゴニスト活性物質としてdaphnolonの単離に成功した。平成23年度の研究計画はオートファジー制御活性を有する活性物質を同定することが主要な目的であったため、概ね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究より、オートファジー制御活性を有する化合物を同定するという計画は達成されたため、今年度は当初の計画通り、標的分子の同定を試みる。標的分子の同定はナノ磁気性ビーズを用いた化学生物学的手法により行う予定である。固定ビーズを用いたアプローチは、非特異的結合も検出してしまうため、本来の標的分子とは異なる分子に着目してしまう恐れがある。そのため、阻害剤を用いたオートファジー関連因子の検証など生化学的解析も併せて行い、作用機構に関する情報が得られなくなる可能性をできるだけ低くする。
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Research Products
(3 results)