2011 Fiscal Year Annual Research Report
乳酸菌バクテリオシンの腸内動態解明に向けた基礎的検討
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23880019
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
荒川 健佑 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (50609930)
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Keywords | 乳酸菌 / バクテリオシン / 抗菌ペプチド / Lactobacillus gasseri |
Research Abstract |
【背景と目的】 乳酸菌の生産する抗菌ペプチド「バクテリオシン」は、安全なバイオプリザバティブとして食品保蔵等に有用であることが広く知られている。また、プロバイオティック乳酸菌の生産するバクテリオシンは、宿主であるヒト等の高等動物の腸内細菌叢に影響を与える一因子として考えられている。本研究では、ヒトや家畜の腸内優勢乳酸菌種であるLactobacillus gasseriが生産する二成分性バクテリオシン「ガセリシンT」に着目し、その構造や生合成機構に関わる遺伝情報を解明することにより、ガセリシンTの腸内動態およびLb.gasseriの腸内生存戦略の一端を明らかにすることを目的とした。 【研究成果】 本年度は、研究協力者とともに、ガセリシンTの精製と生合成関連遺伝子群の解析を行った。過去の研究経過から、ガセリシンTの精製は乳酸桿菌用培地であるMRS培地からでは困難であると考えられていたため、本研究では研究代表者が以前開発した乳ホエイをベースにした培地を用いることとした。その結果、逆相HPLCを最終段階に用いることで、初めてガセリシンTを精製することに成功した。得られた精製物のMS分析から、ガセリシンTは化学的な修飾を受けていない単純ペプチドであると明らかになったが、HPLCの溶出ピーク形状から二成分が複雑に会合した存在形態をとっていると考えられた。また、ガセリシンTの構造遺伝子周辺の塩基配列解析から、ガセリシンTは染色体上の6-7kbpにわたる9遺伝子で生産制御、生合成および分泌を行い、自己耐性能を獲得していることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、ガセリシンTの推定生合成関連遺伝子群をプラスミドベクターに導入して異種発現を行い、生合成関連遺伝子群の全長を決定する予定であった。しかし、目的とする全長のプラスミドベクターへの組み込みが上手くいかなかったため、当初の研究計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ガセリシンT生合成関連遺伝子群の全長解明に向けた研究を行う。また、当初の研究計画に沿って、ガセリシンTの生産調節に関わる制御系遺伝子の発現解析を行う予定である。
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