2011 Fiscal Year Annual Research Report
マメ科植物の根粒共生プログラムを活性化する新規根粒菌因子の同定
Project/Area Number |
23880033
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
下田 宜司 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物共生機構研究ユニット, 主任研究員 (80415455)
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Keywords | マメ科植物 / 根粒菌 / 共生窒素固定 |
Research Abstract |
本研究課題ではマメ科のモデル植物であるミヤコグサに対して正常な根粒を形成できない根粒菌変異株のうち、プリン合成に関わる遺伝子の変異株に着目し、根粒菌のプリン代謝の共生への関与について解析を行った。本年度はまず、これまでに同定したプリン合成遺伝子の変異株のうち、代謝経路の上流に位置する3遺伝子(mlr7447,mll0057,mlr3811)の変異株の感染表現型を詳細に解析した。感染表現型はDsRedで標識した野生株および変異株を作製し解析した。解析の結果、野生株を接種したミヤコグサの根では、皮層まで達する正常な感染糸の形成が見られたのに対し、3つの変異株はいずれも正常な感染糸の形成は認められず、根毛の形態が異常な短い根毛にコロナイズしている様子のみが観察された。このことからプリン合成遺伝子の変異株は感染糸の形成に異常をきたすことが分かった。 植物ホルモンであるサイトカイニンはプリン塩基の一つであるアデニンの誘導体であり、また根粒形成に対しても重要な働きをすることが知られている。そこで、プリン合成変異株をアデニンおよび様々なサイトカイニン(Benzyladenine,Zeatin,Kinetin)の存在下で感染試験を行った。その結果、アデニンやサイトカイニンは培地上での根粒菌の増殖には影響を与えなかったが、アデニンやサイトカイニン存在下で変異株の共生不全表現型の復帰は認められなかった。このことから、根粒菌に由来するサイトカイニンそのものでなく、プリン代謝の中間産物が共生の成立において機能している可能性が示唆された。さらに機能獲得型のサイトカイニン受容体を導入したミヤコグサ毛状根における変異株の感染表現型を調べたところ、一部正常な根粒の形成が見られた。しかし、毛状根の特性により表現型が変化した可能性があるため、再現性の確認が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画について、一部方法・材料などを変更して実施したが、おおむね計画通りに実施できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は解析するプリン合成変異株の数を増やすとともに、昨年度用いたサイトカイニン以外に数種類のプリン代謝中間産物を用いて感染への影響を調査する。また昨年度はサイトカイニンの関与を調べるために、機能獲得型のサイトカイニン受容体を導入した毛状根を用いて解析を行ったが、毛状根の特性自体が変異株の感染表現型に影響する可能性もあるため、今後はサイトカイニン受容体の変異体の利用を検討する。
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