2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23880034
|
Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
紫加田 知幸 水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 任期付研究員 (40603048)
|
Keywords | 有害藻類 / 水産環境 / 沿岸環境 / 赤潮防除 / 沿岸生態系 |
Research Abstract |
本研究は、近年西日本の沿岸域において大規模な赤潮を形成し、甚大な被害をもたらしているラフィド藻シャットネラを実験生物として用いた。H23年度は、日周鉛直移動リズムの位相変化と光環境との関係を把握するために、何時に波長Anm強度Bμmol m^<-2>S^<-1>の光をC時間照射すれば、位相がD時間前進(後退)するかを調べた。様々な光条件でシャットネラに光を照射し、独自に開発したシステムでシャットネラの鉛直移動リズムを自動観測・画像解析を行い、位相変化時間を算出した。光源には、白色蛍光灯および各種LED、反応スペクトル測定にはで基礎生物学研究所の大型スペクトログラフを用いた。まず、暗期10時間の前半4時間および後半4時間中に2時間光を照射すると、それぞれ位相が後退および前進し、暗期の中盤(暗期5時間目)に照射するとリズムが消滅した。異なる強度の青色光(480mm)を暗期の前半に照射した場合、光強度0.03~0.1μmol m^<-2>S^<-1>の照射で位相変化時間が飽和した。次に、反応スペクトルを計測したところ、360~480nmのUV-A青色領域にピークが認められ、スペクトルの形状からフラビンタイプの青色光受容体が関与する可能性が示唆された。本研究により、日周鉛直移動には青色光受容体と体内時計が関与していることが判明し、それらの性状について基礎情報が得られた。今後、各種分子解析を適用し、本生理現象に関与する青色光受容体や時計本体などの分子の同定およびそこから発信されるシグナル伝達経路が解明されることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、日周鉛直移動の光位相制御機構の概要を把握し、確たる生物学的根拠に基づき、日周鉛直移動を人為的に制御する技術を用いた赤潮防除策構築へと展開するための研究基盤を確立することである。H23年度は計画通りに研究が進んだ。研究成果は学会発表し、現在投稿論文審査中である。故に、本研究は現在のところ概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を実施する予定である。しかしながら、次世代シーケンサーの使用は共同利用研究の一環であるので、順番待ち等がどうしても生じ、先方のスケジュールに合わせて実施していく必要がある。そこで、限られた時間の中で最大限の成果を出すために、ターゲットを絞った上でマイクロアレイや定量PCR法による発現解析にスイッチする対応策を打つかもしれない。
|