2011 Fiscal Year Annual Research Report
Paneth細胞幹細胞保護因子を用いた培養上皮移植による炎症性腸疾患治療法の開発
Project/Area Number |
23890012
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
田邊 裕貴 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50396363)
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Keywords | 移植・再生医療 / 細胞・組織 / プロテオーム / 生理活性 |
Research Abstract |
本研究の主目的は,腸管粘膜内のクリプト構造の再生機序を解明し,組織構造を維持した特殊な培養系を確立することとしている.そのためには,上皮再生のメカニズムを解明し,さらに幹細胞保護に作用する因子を同定する.それらを応用して培養条件を最適化することを実施計画とした. 平成23年度では,既報に従いマウス小腸からクリプトを分離し,培養系を確立した.30mM EDTA加PBS中で機械的な振動を加えて小腸絨毛と小腸クリプトを小腸腸管組織から剥離した.フラクションを顕微鏡下で確認し小腸クリプトが豊富なサンプルを集めて,培養に用いた.小腸クリプトをマトリゲル中に混濁し,37℃でゲル化した後に,幹細胞選択培地で覆い,インキュベーターで培養する.小腸クリプトには,幹細胞とPaneth細胞が豊富に含まれるため,個々の細胞に分離精製することなくクリプトを培養することが可能であった. 再生機序の解明のため,培養に必至な因子(Noggin,R-spondin,wnt3A)を除去した培地で培養した結果,R-spondinが再生に必須の因子であることが明らかとなった.更に,幹細胞に隣接するPaneth細胞から分泌される因子Xを培地に加えることでクリプト構造の分化形成が促進される現象が認められた.今後,その因子Xの同定を試みている. 謁歯類での培養系を応用してヒトの培養系を確立することを目的として,臨床研究計画を策定した.本大学の倫理審査委員会の審査を経て本計画の実施は既に了承されている.次年度は,ヒト小腸クリプトを得て培養条件の確立を予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
齧歯類の検体を用いて培養系を確立し,その機序の解明が一部終了した.ヒト検体を用いる準備が既に終了し,臨床研究が開始出来る.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画段階で想定していた組織・細胞の培養効率が悪く細胞増幅が期待されるほどではない.培養に必要な時間に加えて,試薬の量と費用の消費が激しいことが現実的な問題として明らかとなった. その改善策として,スケールダウンした培養系を用いて,微量な検体からの評価系を確立することが求められる.
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