2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23890017
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 亨至 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (10205916)
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Keywords | 東日本大震災 / 小児 / 身長 / 体重 / 発育グラフ / 肥満 / 食欲不振 / 運動不足 |
Research Abstract |
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方沿岸を中心に甚大な被害を及ぼした。小児にとっても心身ともに計り知れない影響を及ぼしていると推察される。そこで、大震災で大きな被害を被った被災地に居住している小学生を対象として、小学校にてこれまで定期的に計測され記録の入手できた児童の身体計測値を利用し、大震災という環境変化や心理的ストレスが全身成長に与える影響を調べた。津波による被害が大きかった宮城県北部の沿岸部にある小学校の協力を得て、全校生徒計約100名の震災前からの身長、体重の測定値を入手した。各児童について小学校入学時からの身長・体重の発育グラフを作成し、身長と体重の変化から震災による影響の有無について検討した。その結果、震災後の1年間に体重増加がほとんど見られなかった児童がかなり見られた。しかし、身長増加にまで影響したと考えられた児童はわずかであった。一方、もともと肥満傾向のあった児童が震災後に大幅な体重増加により肥満が悪化している例が非常に多くみられた。この地区では肉親や知人を亡くした児童も少なくない。また、現在においても校庭には仮設住宅が建設されており自由に使える環境にはない。したがって、体重増加の停滞や肥満の悪化は、震災による心理的ストレスによる食欲不振や過食、睡眠障害、運動不足などの複合要因が絡んでいるものと推測される。今後、他の小学校についてもさらなる調査を行うとともに、養護教諭や教育委員会などと情報交換し、身体測定結果をフィードバックしながら健全な成長への具体的指針について検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被災地の約100名の小児の身長および体重の小学校入学時からの測定値を入手して、すべて解析を行うことができたので、おおむね順調に進展したと考えられる。ただし、当初予定していた尿中成長ホルモン濃度測定は保護者からの理解が得にくいとの理由から実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
成長への影響は長く続くと言われており、成長のキャッチアップが見られるかどうかについても、本研究において対象となって小学校について継続して調査を行う予定である。 また、他の地域の小学校を対象としてさらに調査を行い、成長に対する影響に差異があるかどうかについても検討を行うことにしている。
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