2011 Fiscal Year Annual Research Report
ピロリ菌がん蛋白質CagAの胃上皮細胞内プロセッシングとその病態生理学的意義
Project/Area Number |
23890037
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 康弘 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (30613004)
|
Keywords | ヘリコバクター・ピロリ菌 / CagA / 胃がん / SHP2 |
Research Abstract |
cagA遺伝子陽性ピロリ菌の胃内持続感染は胃がんの発症に深く関わる。cagA遺伝子産物であるCagAタンパク質は胃上皮細胞内に直接侵入した後、宿主細胞内のSrcファミリーキナーゼによりチロシンリン酸化される。チロシンリン酸化を受けたCagAはSHP2と相互作用し、その機能を脱制御することによって、胃上皮細胞の増殖を異常に亢進する。チロシンホスファターゼであるSHP2はがんタンパク質として知られているが、細胞悪性化に関与するSHP2の基質は不明であった。近年、我々は細胞悪性化に重要なSHP2の新規核内基質としてParafibrominを同定したが、この過程で、CagAがN末端側100kDa断片ならびにC末端側30kDa断片に分解され、30kDa断片のCagA分子が核内に移行することを見出した。本研究では、これまで知られていなかった核内CagAが持つ病態生理学的役割を明らかにすることを試みた。 胃上皮細胞に異所性発現させたCagAの細胞内局在を詳細に解析したところ、全長CagAならびにC末端側CagA断片が核に存在することを見出した。加えて、このC末端側CagA断片は胃上皮細胞内でチロシンリン酸化を受けており、リン酸化依存的にSHP2と結合することが明らかとなった。 ピロリ菌CagAは宿主細胞内に侵入後、細胞膜内面に局在しその病原生物活性を発揮すると考えられていた。ところが、本研究によりCagAは細胞膜内面だけではなく核にも局在していることが示され、CagAは核内においても病原生物活性を発揮している可能性が示唆された。本研究課題の更なる遂行により、CagAが持つ未だ不明の病態生理学的役割が明らかとなり、ピロリ菌感染による胃がんの革新的な予防法・治療法開発へとつながる重要な知見を得ることが出来ると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画した実験は概ね遂行できており、さらに来年度に計画していた研究の一部を本年度に行うことができた。加えて、これまでに得られた研究の結果より、研究目的の達成に近づいていることは明らかである。よって、上記の評価に至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は当初の計画通り遂行することを予定しており、来年度には本研究課題の研究成果を学術雑誌にて報告することを目標とする。
|