2011 Fiscal Year Annual Research Report
MEKのSUMO化によるERK経路の制御機構と発癌における異常の解明
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23890077
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久保田 裕二 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (70614973)
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Keywords | 癌 / ERK / Ras-MAPK症候群 / MEK / SUMO / MAPK |
Research Abstract |
申請者らは最近、MEKのSUMO化によるERK-MAPK経路の負の活性制御機構を発見し、また癌遺伝子Rasによるその破綻が発癌を促進する事を明らかにした。しかしながら、癌や重篤な疾患におけるERK経路の異常活性化の詳細な機構については、未だ不明な点が多く残されている。 申請者らは、先天性Ras-MAPK症候群や孤発性癌で認められるMEK点変異体に着目し、同変異体によるERK経路の異常活性化機構及び発癌・発症メカニズムの解明を試みた。本年度は、これらMEK点変異体の機能的解析を重点的に行い、その高活性型への変換の分子メカニズムについて重点的に検討した。これらのMEK点変異はキナーゼ活性を著しく増強する事が知られているが、申請者らはこれらの点変異がMEKのSUMO化異常を誘導している事を新たに見出した。そこで、これらMEK点変異体のSUMO化をUFDS法により人工的に回復させたところ、同変異体による細胞の悪性形質転換能が有意に抑制される知見を得た。次に、孤発性癌におけるMEK点変異体の異常活性化機構について、in vitro及びin vivo両面から検討した。その結果、孤発性癌由来のMEK点変異は、MEK-SUMO化異常に加えて、自身のキナーゼ活性を亢進する特殊な分子機構により、異常活性化能を獲得している事を見出した。 以上の結果から、Ras-MAPK症候群や孤発性癌におけるMEK遺伝子の点変異は、MEK活性を特異的に亢進する二重の機構により、ERK経路の正常な活性化を破綻させる事で、個体の発生異常や発癌促進に寄与している事が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異常活性型MEK点変異体による発癌・発病の分子メカニズムについて、本年度はin vitroおよびin vivoにおける各変異体のキナーゼ活性の機能解析、及び軟寒天培地での悪性形質転換実験を中心的に行うことにより、新たな知見を得る事に成功した。また本研究の過程で、MEK特異的阻害剤に関する新たな知見を得た。これは、本研究をより具体的な癌治療研究へと発展させる上で、極めて重要な意味を有していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
異常活性型MEK点変異体のSUMO化異常が、各種癌遺伝子の悪性形質転換能の増強に寄与しているか確認するため、軟寒天培地上でのコロニー形成実験により検討する。さらに、UFDS法を用いたMEK点変異体のSUMO化の回復により、同発癌活性が抑制され得るか検討する。また、MEK阻害剤による新規知見については臨床応用への可能性を考慮し、必要な基礎的情報をin vivo/vitro両面から得るべく、実験系の確立を行う。また、MEKの脱SUMO化を担うSUMO-Proteaseの癌病態への関与について、培養細胞への遺伝子導入等の検討を行い、確認する。さらに、SUMO化不能MEK点変異体を発現するノックインマウスを作出し、個体形成や易発がん性について組織学的に解析を行う。
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Research Products
(3 results)