2011 Fiscal Year Annual Research Report
インターロイキン6によるヒストン修飾と炎症性貧血の病態制御機構の解明
Project/Area Number |
23890098
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
磯部 智康 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特任研究員 (40402341)
|
Keywords | 転写制御 |
Research Abstract |
近年我々の研究室では、キャッスルマン病患者において鉄代謝を制御する血中ポリペプチドHepcidinがIL-6により過剰産生され、二次性貧血の原因となることを報告し(Song et al, 2010 Blood)の、その転写制御機構を解析中である。本研究では培養細胞を用い、炎症性サイトカインIL-6によるHepcidinの発現制御をモデルに、「ヒストン修飾の制御」の視点から遺伝子発現制御機構を解析している。 「研究計画・方法」で記したように、我々はヒストン修飾に特異的なモノクローナル抗体を入手し、2種類の培養肝細胞株を用いてクロマチン免疫沈降法によるヒストン修飾の解析実験を立ち上げた。 予備検証としてハウスキーピング遺伝子GAPDH(転写が盛んに行われている遺伝子の例で、転写型のヒストン修飾を受けていることが予想される)および、成体肝細胞で発現のない遺伝子β-globin(転写が抑えられている遺伝子の例で、非転写型の修飾を受けていることが予想される)のプロモーター領域のヒストン修飾の解析を行い、機能既知の6種のヒストン修飾について、過去の報告に一致した結果が得られた。 続いて、本題であるHepcidinプロモーター領域について、上記6種のヒストン修飾の解析を行った。この結果、IL-6,BMP-2とも、Hepcidinの転写を誘導することを確認済みであるが、解析したヒストン修飾中でIL-6刺激特異的に変動するものを見出した。 上記GAPDHやβ-globin等、個々の細胞の基本性能を決める静的な転写制御ではなく、サイトカイン刺激による動的な転写制御について、個々のサイトカインに対応した特異的なヒストン修飾の制御を明らかにした報告は、世界的にもまだ数が少ない。また、本研究結果はIL-6とBMP-2によるHepcidin発現誘導の差異を、従来の転写因子の活性化とは異なる視点から捉える足がかりとなる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本助成の性質上、執行可能時期が昨年9月以降と、他の助成より遅めであるため、開始時期がやや遅れ、研究計画に記したものよりは進行が若干遅れている。しかしながら、進行速度自体は予定よりも早く進んでおり、初動の遅れは間もなく解消される見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
「研究業績の概要」の項で記したように、我々はIL-6によるHepcidinの発現誘導とBMP-2によるそれを比較し、IL-6刺激時に特異的に変動するHepcidinプロモーター上のヒストン修飾を見出した。さらに、過去の報告(Shi & Whetstine 2007 Mol Cell ほか)などをもとに、この修飾を直接的に触媒し得る酵素を現在4種まで絞り込んだ。以降、「研究の実施計画」に則り研究を推進していく。現在のところ、研究計画変更の必要性はない。
|