2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖アルコールによるバイオフィルム形成阻害機構の解明
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23890112
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋野 恵衣 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (90614553)
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Keywords | 歯周病原性バイオフィルム / メタボローム解析 / プロテオーム解析 / 糖アルコール / Porphyromonas gingivalis |
Research Abstract |
糖アルコールは,う蝕予防に効果があるとされる一方で,歯周病制御への応用に関する報告はほとんどない.我々はこれまでに,数種の糖アルコールが歯周病菌Porphyromonas gingivalis(Pg)とStreptococcus gordonii(Sg)で構成される混合バイオフィルムの形成を顕著に抑制することを確認している.そこで,供試糖アルコールの中で最も抑制効果の高かったエリスリトールに着目し,Pgのタンパク質や代謝産物への影響を検討することで,エリスリトールの作用機序を明らかにしつつある.本研究では,プロテオーム解析およびメタボローム解析の情報を統合的に解析し,歯周病原性バイオフィルム構成細菌のタンパク質および代謝産物の動態を網羅的に探索することにより,バイオフィルム形成機構を解析するとともに,糖アルコールによるバイオフィルム形成阻害機構の解明を目指す. 代謝産物は遺伝子・タンパク質と比較し,より個体内全体に引き起こされる現象に密接に関連している.また,すでに多くの微生物のゲノムが解読され,細胞内のほとんどの代謝経路の同定が可能となっている.これらを踏まえ,代謝物質および代謝経路の変化に着目し,オミクス手法により歯周病菌のバイオフィルム形成機序の解明につなげようとする本研究は,従来の研究手法と全く異なる視点からアプローチを行う点で独創的である. 平成23年度の研究においては,糖アルコール存在/非存在下のSgを試料としたメタボローム解析を実施し,Pgを試料としたメタボローム解析の結果と比較検討を行い,糖アルコールが各菌にどのような影響を及ぼすのかを検討した.さらに,トランスウェルアッセイを用いてSg代謝産物や糖アルコールの存在/非存在下のPgおよびPg代謝産物や糖アルコールの存在/非存在下のSgを試料としたメタボローム解析を実施した.これらの結果を統合し、総合的に解析することにより,SgとPgの相互の影響を明らかにし,Sg-Pg混合バイオフィルム中での栄養共生状態を現在解析しているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画のうち,PgおよびSgの2菌種の混合バイオフィルムの形成に及ぼすエリスリトールの影響を検討するための解析のうち,各菌単独に対する解析および1菌種の存在下でのもう一方の菌種の菌に対する解析のそれぞれについてはすでに実施されている.現在は,それらの結果を統合的に検討している段階であり,研究計画におおむね沿って順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
初期定着菌Sgおよび後期定着菌Pg2菌種の混合バイオフィルムでの統合解析により,代謝物質の動的変化や活性化代謝経路の同定を行い,歯周病原性バイオフィルム形成機構の理解と同時に,糖アルコールによるバイオフィルム形成阻害機序を明らかとしたい.さらに歯周病原性バイオフィルムの形成・成熟に重要な役割を果たすとされる中期定着菌Fusobacterium nucleatum(Fn)を加えた3菌種混合バイオフィルムについて同様の解析を進め,複雑な複合菌種で形成される歯周病原性バイオフィルム中のコミュニティーで繰り広げられる相互扶助関係の解明に取り組む予定である.
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