2011 Fiscal Year Annual Research Report
BMP-2の骨髄環境下における骨髄ニッチ形成・骨形成抑制メカニズムの解明
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23890123
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
縄稚 久美子 岡山大学, 大学病院, 助教 (10379787)
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Keywords | BMP-2 / 骨髄 |
Research Abstract |
BMP-2が骨髄腔内・外で相反する機能を持つというこれまでの我々の研究背景のもと,BMP-2の骨髄腔内の骨代謝環境に与える影響を明らかにすることを目的に,本年度はBMP-2の局所投与が骨髄腔内の骨代謝環境に与える影響およびその分子メカニズムの解明を行なった.つまり,BMP-2を含むアテロコラーゲンの凍結乾燥体をマウス大腿骨骨髄腔内に移植した.対照として別個体のマウス大腿骨骨髄腔内にBMP-2を含まないアテロコラーゲンの凍結乾燥体を移植した.移植から14日後にそれぞれ大腿骨を回収し,マイクロCTによる骨形態学的解析および免疫組織学的解析を行なった.また,骨髄腔外に形成された骨を除去したうえで,移植体周囲の硬組織からRNAを回収し,骨芽細胞・破骨細胞分化マーカーの遺伝子発現を定量性RT-PCRにて解析した. 骨形態学的解析の結果,BMP-2群では骨髄腔外には多量の骨形成が確認できたが,骨髄腔内の移植体周囲の海綿骨の骨密度・海綿骨骨量は,対照群と比較して有意に低かった.組織所見より,対照群では骨髄腔内にosteocalicin(OCN)弱陽性の骨組織とその周囲にOCN陽性の骨芽細胞およびTRAP染色陽性の多核の破骨細胞が確認された。一方,BMP-2群では骨髄腔外においてOCN弱陽性の骨組織とその周囲に骨芽細胞および破骨細胞が確認されたが,骨髄腔内では骨組織およびそれらの細胞は確認されなかった.また,分子生物学的検討を行った結果,BMP-2によって骨髄腔外に形成された骨組織では,対照群と比べ骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現量が有意に上昇していた.しかし,BMP-2群の既存骨は,対照群と比較して骨芽細胞,破骨細胞分化マーカーの遺伝子発現量が有意に低下していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,BMP-2はマウス大腿骨骨髄腔内において,骨形成を抑制するというこれまでの報告とは全く異なる結果を骨形態学的,分子生物学的に明らかにした.また,研究計画に記載しているフローサイトメトリー,CFU-Fsについても予備的な検討が終了し本実験に移行できる.さらに次年度に予定していたBMP変異体を用いたBMPアンタゴニストの阻害実験についても,予備実験を遂行し興味深いデータが出始めている.研究計画の項目の多く実験を遂行しており,よって,本研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに本研究ではBMP-2が骨髄腔内では骨形成を抑制するということを明らかにし,そのメカニズムを検討する為,様々な予備実験を進めてきた.今後は,BMP-2の骨髄腔内の間葉系幹細胞や造血幹細胞,血球系細胞など様々な細胞に与える影響をフローサイトメーター等を用い詳細に検討していく予定である.さらにBMPアンタゴニスト阻害実験を行い,骨髄腔内においてBMP-2が骨形成を抑制するメカニズムの一端を明らかにしていく予定である.
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