2012 Fiscal Year Annual Research Report
ポリリン酸を用いたインプラント周囲炎治療法の確立を目指した研究
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23890134
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
原田 佳奈 広島大学, 大学院・医歯薬保健学研究院, 特任助教 (90609744)
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Project Period (FY) |
2011-08-24 – 2013-03-31
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Keywords | ポリリン酸 / マクロファージ / 炎症 / インプラント |
Research Abstract |
インプラント周囲炎の治療では、まずインプラント表面のデブライドメントと抗菌薬の投与が行われるが、損傷組織の治癒に時間がかかるため、再感染により病態が慢性化することが多い。そこで、インプラント周囲組織の再生を同時にかなえる治療法が望まれる。直鎖状のリン酸ポリマーであるポリリン酸は、口腔細菌であるPorphyromonas gingivalisに対して抗菌作用を示す他、組織再生や骨形成を促進するため、インプラント周囲炎治療への応用が期待できる。そこでさらに、炎症病態の形成に関与するマクロファージに対してポリリン酸がどのような影響を与えるのか検討した。これまでに、細菌に由来するリポポリサッカライド(LPS)により活性化されたマクロファージにおいて、ポリリン酸は誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を抑制し、一酸化窒素(NO)放出量を減少させることを明らかにしてきた。強いiNOS発現抑制作用を示した長鎖長(平均リン酸数130)のポリリン酸を用いて濃度依存性を検討したところ、100μMの濃度(リン酸換算濃度)でポリリン酸の作用を最大に達した。また、ポリリン酸はiNOS mRNA発現を抑制することにより、iNOS発現量を減少させることが示された。マクロファージの生存に与えるポリリン酸の影響を検討したところ、ポリリン酸は単独では無影響であった。さらに、LPS処置マクロファージの生存に対しても、ポリリン酸は影響を与えなかった。したがって、ポリリン酸はマクロファージの生存に影響を与えることなく、iNOS発現を抑制することが示された。一方、ポリリン酸はLps誘発性のTNF放出に影響を与えず、ポリリン酸はLPSに対するマクロファージの反応をすべて抑制するわけではないことが示された。iNOSにより産生される多量のNOは歯周組織の破壊に関与することが示唆されている。ポリリン酸は、抗菌作用、組織再生促進作用、骨形成促進作用に加えて、NO産生を抑制することにより、インプラント周囲炎に対して有効性を示す可能性が示唆された。
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