2011 Fiscal Year Annual Research Report
シクロデキストリン複合体形成によるタンパク質性薬物のPEG化技術の構築
Project/Area Number |
23890161
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
東 大志 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (20613409)
|
Keywords | シクロデキストリン / インスリン / ポリエチレングリコール / 包接複合体 / 超分子 / ドラッグデリバリー / 血中滞留性 / 光応答性 |
Research Abstract |
【目的】近年、タンパク質性薬物の不安定性や低い血中滞留性を改善するため、ポリエチレングリコール化(PEG化)技術の研究・開発が盛んに行われている。しかし、タンパク質性薬物にPEGを修飾するとその生理活性が大きく損なわれるため、その治療効果が十分に発揮されない。本申請課題では、タンパク質性薬物にシクロデキストリン(CyD)を導入し、さらに、CyDと相互作用する分子を修飾したPEGを混合することで、可逆的なPEG化技術を実現することを目的とした。また、超分子PEG化タンパク質の前駆物質である、タンパク質性薬物/CyD結合体も新規性に富む化合物であることから、本年度は、その熱安定性や容器への吸着性を評価することを目標とした。 【方法】CyDには、タンパク質性薬物の凝集を顕著に抑制することが知られる、グルクロニルグルコシル-β-CyD(GUG-β-CyD)を用いた。まず、活性化したGUG-β-CyDとウシインスリンをDMF/水の混液に溶解後、室温で10分間撹拌することにより結合体を調製した。熱安定性試験は、インスリンおよび結合体溶液を50℃で7日間インキュベート後、残存したインスリンを分光光度計により定量することで行った。また、各試料をガラスもしくはポリプロピレン容器に添加し、2時間静置後、溶液中に残存したインスリン量を定量することにより、容器への吸着性を評価した。 【結果・考察】MALDI-TOF-MSにおいて、結合体の分子量付近にピークが観察されたことから、その調製が確認された。また、結合体の円二色性スペクトルの結果から、結合体中のインスリンの構造は保持されていることが示唆された。結合体は、インスリン単独と比較して、熱安定性が高く、また、容器への吸着も少ないことが示唆された。以上の結果より、GUG-β-CyDを修飾することにより、インスリンの製剤特性を改善可能なことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、シクロデキストリンとタンパク質性薬物の結合体を調製し、その製剤特性を評価することであった。本年度の実施内容は上記クライテリアを満たしているため、本申請課題はおおむね順調に進展しているものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、シクロデキストリンとタンパク質性薬物の結合体の生理活性を評価することを急務とする。生理活性の評価を行ったあとは、本申請課題の最重要課題である超分子PEG化タンパク質の調製、その生理活性ならびに血中滞留性の評価を中心に研究を展開する。その際、様々な分子量のPEG鎖を用いることで、タンパク質の血中滞留性を制御可能であるか見極める。また、PEG鎖に修飾する分子にアゾベンゼンも用い、光応答性PEG化技術の構築も目指す。
|