2011 Fiscal Year Annual Research Report
高機能性温熱感受性リポソームによる薬剤耐性癌に対する新規治療戦略
Project/Area Number |
23890174
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田上 辰秋 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 講師 (10609887)
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Keywords | 薬学 / ナノデバイス / 癌 / トランスレーショナルリサーチ |
Research Abstract |
薬剤耐性は癌治療において解決されなければならない最重要課題の一つである。近年我々は、圧倒的な薬物放出能と温熱感受性に優れた「超」高感度の温熱感受性リポソーム(HaTリポソームと呼称)を開発し、軽温熱療法の温度範囲(40-42℃)で抗癌剤を腫瘍組織選択的に送達することに成功した。本研究の目的は、手術による外科的切除が不能である固形癌、特に薬剤耐性癌にも応用可能な高機能性リポソーム製剤を開発することである。申請者はHaTによる薬剤耐性を向上させる試みとして、(1)抗癌剤のリポソーム内保持力及び血中滞留性を向上させる工夫をする(2)P糖タンパク機能阻害作用を強化する工夫をするという試みを行った。(1)に関しては金属イオン勾配を利用したリモートローディング法により抗癌剤をリポソーム内に効率的に封入することに成功した。従来型のpH勾配を利用した方法と比較し、リポソーム内における薬物の保持力は安定していることがわかった。In vivoにおける動物実験の結果、我々の開発した新規のHaTリポソーム製剤は、通常のHaTリポソームと比較し、血中滞留性が改善された。また(2)に関しては、Brij界面活性剤のもつP糖タンパク機能阻害作用を利用した。その結果、薬剤耐性株に対し、in vitro、in vivoにおいても腫瘍成長の抑制が見られた。以上より、我々は、薬剤耐性癌に有効な新規のHaTリポソーム製剤の開発に成功し、それと同時に薬剤耐性癌の克服に有効な多くの知見を得ることができた。
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