2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23890180
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
梅村 康浩 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (40612734)
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Keywords | がん / 体内時計 / ES細胞 |
Research Abstract |
分化させた細胞から、ES細胞に近い性質を持つ人工多能性幹(iPS)細胞を作ると、体内時計のリズムが消え、細胞の分化と体内時計の形成か密接に関係していることが明らかにされている(Yagita et al.,PNAS 2010)。本研究では、未分化細胞であるES細胞が、体内時計のリズムを刻んでいないのと同様に、悪性度の高い未分化ながん細胞ほど、体内時計が喪失しているのか明らかにする。この研究により、体内時計の形成度が、がん細胞の悪性度を測る一つの指標になりえ、さらに、体内時計形成の解明が、がん細胞を含めた「分化・発生」の統合的理解の糸口になる可能性がある。 本年度において、以下のような成果をあげることができた。(1)数種類のヒト神経芽腫において、概日リズムを調べた。時計遺伝子であるBmal1遺伝子とDbp遺伝子のプロモーター下流に発光レポーターであるルシフェラーゼを挿入したものをレポーターとして用いた。また、安定な発現株を得るために、トラスポゾンベースのベクターを用いて、ゲノムに挿入した。光電子増倍管を用いた多細胞レベルの観察と冷却CCDカメラと顕微鏡を用いた1細胞レベルの観察により明らかにした。リズム度を定量するためには、スペクトル解析を行った。その結果、正常細胞に比べ、ヒト神経芽腫では、大きく乱れている細胞株から、あまり乱れていない細胞株まで様々であることがわかった。(2)さらに、これらの細胞株の中から、リズム度の低い細胞株を用いて、細胞分化へと誘導する薬剤処理を行った。これは実際の治療にも用いられる方法である。その結果、リズム度を大きく回復させることができた。このことは、体内時計形成度が、癌悪性度を測る一つの指標となり得ることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生化学的な手法による裏付けをさらに行う必要があるが、当初の予測通りの結果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果の生化学的な裏付けを行う。さらに、癌悪性度マーカーとして、知られているN-mycタンパク質の発現量と概日時計形成度との関係を明らかにする。発現制御には、doxycycline誘導システムを用いる。細胞レベルの解析とモデルマウスを使った解析も行う。
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